ライオンズ打線に繋がりを生むには若林楽人選手の1番固定が鍵となる

  • 投稿日:
  • カテゴリ:

松井稼頭央監督のスピード野球の成否はリードオフマンの固定が鍵

若林楽人

松井稼頭央監督が掲げるスピード野球を成り立たせる絶対条件として、やはりリードオフマンの固定は避けては通れない課題だ。ここをクリアすることができなければ、また日替わりでトップバッターを回すことになり、打線の安定感を産むこともできない。

辻発彦監督はここに金子侑司選手を据えようと幾度か試みたが、不調や怪我により金子選手がその期待に応えられることはなかった。その金子選手は来季は33歳という年齢になり、ここから金子選手がさらに数字を伸ばしていくことは現実的には考えにくい。となると金子選手は調子がいい時期であっても1番としてではなく、9番あたりで起用すべきだろう。

そして今季は、生涯ライオンズ宣言も飛び出した外崎修汰選手も1番に座る試合があった。確かに走力やパンチ力の魅力は大きいが、外崎修汰選手は盗塁王を狙えるほどの走力ではないため、パンチ力を生かすためにも6番以下での起用が望ましいように思える。下手に制限の多い1番を打たせるよりは、6番以下で自由に打たせてあげた方が外崎選手は打率を伸ばすことができるだろう。

ちなみにルーキーの蛭間拓哉選手を秋山翔吾選手のようなリードオフマンとして推す方も多いようだが、蛭間選手はやはり将来的には四番打者へと成長させていきたいため、スケールを大きく育成していくためにも1番での起用は避けたいところだ。ではライオンズのリードオフマンには誰が相応しいのだろうか?

やはり若林楽人選手を置いて他にはいないだろう。走力、守備力、打力のバランスも良く、盗塁王を狙えるだけの走力を持っているということは、2021年に怪我をする直前までの盗塁数ですでに証明してくれている。

若林選手は2021年に膝の大怪我を経験し、長いリハビリ期間を経て今季は1軍に復帰したわけだが、まだ膝が本調子ではなかったのか、1軍に定着するまでには至らなかった。だがここから秋季キャンプ、春季キャンプを経ていけば膝も怪我をする前の状態まで戻していけるはずだし、来季は完全復活にも期待を寄せたいところだ。

だが患部が膝だけに、心配が尽きないことも事実だ。例えば巨人の吉村禎章選手のように選手人生を通して膝の後遺症に悩まされることもある。だとしても現代医学はかなり進んでいるため、若林選手が吉村選手のようになることは可能性としては非常に低いと思われるが、それでも膝の怪我は完治したとしても油断すべきではないだろう。

かつての片岡易之選手にタイプが似ている若林楽人選手

若林選手は非常にパンチ力のある打者でもある。もちろんホームランを量産するタイプではないが、時々見せる長打の打球はかなり力強い。二桁に届く程度のホームランを打つだけの力はありそうだ。ただし若林選手はまだインサイドアウトの徹底ができていない。

スウィング前は左足をやや後ろに引いて開いて構え、ホームプレート側にスクエアスタンスで踏み込みながらステップしていくのだが、この左足のつま先が綺麗なスクエアになっていないのだ。例えば栗山巧選手の右つま先はステップ後はまっすぐ右打席側を向いていることが多い。だが若林選手の左つま先はステップ後に二塁手方向を向いていることが多いのだ。

このように体がやや開きやすいスウィングをしているためボールの内側を叩くインサイドアウトではなく、やや外側の面を叩くアウトサイドインになりやすい。そのため若林選手の強い打球によるヒットはほとんどがセンターからレフト方向で、一方逆方向へのヒットは力無い打球が比較的多い。

若林選手が打率.280〜.290以上を打ってリードオフマンとして固定されるためには、この体を開いて打つ癖を修正する必要があるだろう。と言ってもこれはメジャーチェンジではなく、マイナーチェンジで済む程度の修正ポイントであるため、本人や打撃コーチにその意識さえあれば秋季キャンプ中に動作改善は完了させられるはずだ。

つまり若林選手がリードオフマンとして活躍し続けるためには、栗山巧選手のような足部の使い方のマスターが必須になるということだ。この箇所の修正さえ済ませてしまえば、膝に問題がないようであれば打率.300弱の数字でリードオフマンとして固定されるようになるだろう。

ちなみに現時点での若林選手のタイプは、かつての片岡易之選手に非常によく似ていると言える。パンチ力があるのだがリードオフマンとしてはやや引っ張ったり、打ち上げることが多い。片岡選手ももし栗山選手のような足部の使い方ができていれば、幾度となく3割を打てていたはずだ。

古川雄大選手をスケールの大きなスイッチヒッターに育てるのはありだと思う

中には若林選手の走力を生かすためにスイッチヒッターへの転向を薦める向きもあるようだが、筆者はこれには反対だ。これが例えば松井稼頭央選手のように高卒でプロ入りして、プロ入り間もない10代のうちからスイッチの練習をしていくのならいいと思う。だが若林選手は大卒選手で、来季はもう25歳となる。

25歳という年齢でまだレギュラーになれていない状況を考えると、左打ちの練習に時間を割くよりは、右打席に集中してまずはレギュラーを掴み取ることの方が重要だ。

一方今年のドラフトで2指名された古川雄大選手に関しては、本人の意向次第では松井稼頭央選手のようなスケールの大きなスイッチヒッターになる挑戦をしてもいいと思う。だが若林選手に関してはいくら走力を生かすためだとはいえ、どっちつかずの打者にならないようにするためにも、ここからのスイッチ転向は避けた方が無難そうだ。

若林選手には上述の通りパンチ力がある。一般的な1番打者タイプの選手は、時として当てるだけのバッティングをしがちだ。これは追い込まれた後に空振り三振をしにくいという意味ではプラスに働きもするのだが、しかし追い込まれる前に当てるだけのバッティングをしてしまう選手が大成することは難しい。

だが若林選手はしっかりとバットを最後まで振り抜くスウィング力を持っている。だからこそ長打も打てるわけなのだが、このパンチ力に加えて栗山巧選手のような正確性が身に付けば、若林選手は間違いなく不動のリードオフマンとなっていくだろう。そして毎年のように盗塁王にもなれるはずだ。

スワローズ打線にはあって山賊打線にはなかったもの

実はここだけの話、筆者は山賊打線は好きではなかった。なぜなら打線にまったく繋がりが見えてこず、ライオンズ打線がまるで個人競技のように見えていたからだ。198本塁打を記録した2008年のライオンズ打線は山賊打線以上の破壊力を誇っていたわけだが、打線の繋がりはあった。特に片岡選手と栗山選手のコンビネーションはまるで芸術品のようだった。そして打線が個人競技ではなくしっかりと線になっていたからこそ、この時のライオンズは短期決戦でも強かった。

打線が線として繋がっていかない場合、野球が常に1対2になってしまう。つまり打者1人vsバッテリーという意味だ。すると打者にとっては分が悪い状況になってしまい、どうしても後手後手のバッティングになってしまう。

逆に打線が線としてしっかりと機能していれば、これが1対2ではなくて9対2になる。そして常に9対2で戦えているのがこの二年間の東京ヤクルトスワローズだ。スワローズ打線は高津監督の戦略の下、各打者が「なんとしてでも次の打者に繋げよう」という意識で打席に立っている。そしてそれが画面を通しても伝わってくるのだ。

三冠王を獲得した村上選手でさえも繋ぎの精神を決して忘れない。今季はやや数字を落としたとはいえ山田哲人選手も然りだ。タイトルホルダーである主力打者たちがこのように繋ぎの精神を持っているのだから、スワローズがリーグ連覇したことも、昨日のバファローズとの日本シリーズでも3点ビハインドの9回裏という土壇場で同点に追いついたのにも驚きはなかった。

村上宗隆選手のフォーム分析〜高い打率で本塁打を量産できる理由

一方山賊打線にはそのような繋ぎの意識が希薄だった。もちろんライオンズナインにも繋ぎの意識がまったくなかったわけではないと思うのだが、スワローズのような勝てるチームと比較をするとそれはあまりにも希薄だった。となると来季ライオンズ打線をしっかり機能させるためには、松井稼頭央監督がどれだけ打線に繋ぎの意識を徹底させられるかが鍵となるのだろう。

そしてその象徴ともなりうるのが1番若林選手、2番源田主将の1・2番コンビだ。いや、これは1番源田主将、2番若林選手でもいいだろう。若林選手に9つの打順の中で最も制限が多い2番を打たせることにより、さらに野球観に広がりを持たせることは将来に向けて大きなプラスとなるはずだ。

打線に繋がりを持たせるためには、何はともあれ1・2番のコンビネーションが最重要だ。ここに繋がりが生まれなければ打線全体に繋がりが生まれることもない。だからこそライオンズはリードオフマンの固定はもはや待ったなしの状況となっている。

若林楽人選手が不動のリードオフマンになるための鍵

秋山翔吾選手のメジャー移籍直前の四球率は打席数に対し11.5%だった。一方の若林選手は2021年の怪我をする前の数字を見ると6.3%という数字だ(2022年は4.2%)。これは片岡易之選手に近い数値だ。若林選手がリードオフマンとして固定されていくためには、この数字をせめて10%弱くらいにはすべきだろう。

ただ、打力自体はまだそれほど恐れられてはいない若林選手の場合、ここまでは比較的ストライクゾーンで勝負してもらえることが多かった。特にルーキーイヤーはそれが顕著で、もしもっとボール球を使われるようになってきたら、若林選手としてはどれだけ四球を増やせるかがリードオフマンとしての真価が問われるポイントとなるはずだ。

ちなみにまだホームラン数がそれほど多くなかった1999年の松井稼頭央選手のこの数字は9.2%だった。若林選手としては、この松井稼頭央選手の数字が一つの目安となっていくのではないだろうか。リードオフマンという主力となれば、ストライクゾーンで勝負してもらえる機会はどんどん減っていく。そうなった時鍵となるのが如何にファーストストライクを強振していけるかという点と、追い込まれたあとにボール球を見極められる選球眼だ。

ファーストストライクの強振と追い込まれた後の選球眼を今までよりも一段上のレベルに持っていくことができれば、2023年の若林選手は、いきなり打率.290とまでは行かずとも、.280程度で40盗塁以上マークできるような活躍を見せられるだろう。

だが逆にファーストストライクでのミスショットが増えてしまうとバッティングが後手後手になってしまい、追い込まれてから難しいボールを振っていかなければならない状況が増え、それに伴い四球数も減り、打率も上がらなくなってしまう。そうなるか否かの鍵がまさにファーストストライクと追い込まれてからの選球眼ということになる。ただしこの追い込まれてからの選球眼は、ファーストストライクで強振できることが前提だ。

年齢的にも能力的にも、やはり若林選手が不動のリードオフマンに成長することがライオンズとしては最も望ましい。若林選手がシングルヒットや四球で出塁すれば、そこには盗塁と合わせて二塁打同等の価値が生まれる。そして2番源田主将の進塁打などによりチャンスは拡大され、3〜4番は外野フライさえ打てれば打点を稼げるという状況になる。これこそが打線の繋がりであり、クリーンナップの打率を上げていくための必須事項となる。

しかし1〜2番が連動してこないと、3〜4番は長打を打たなければ打点を挙げられなくなり、そのような状況は打者を個に走らせやすく、打線の繋がりをさらに欠くことになってしまう。そうならないためにも、やはり来季は若林選手には不動のリードオフマンとしてグラウンドを駆け回ってもらいたいのだ。

そして守備範囲が広大な若林選手がセンターに固定されれば、森友哉捕手の去就如何ではセンターラインがようやく固まることになる。やはり野球というスポーツでは、バッテリーを中心としたセンターラインが不安定だとなかなか勝てない。そのため来季ライオンズが安定した戦いを見せていくためにも、若林選手が1番に固定されるか否かは非常に大きな要素を孕んでいると筆者は考えている。

⚾️ 筆者:Kaz@Twitter

THE埼玉西武ライオンズガゼット