若林楽人選手がチーム内に生み出していく数々の相乗効果

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若林楽人

5月までで20盗塁をマークした新たなスピードスター・若林楽人選手

秋山翔吾選手がメジャー移籍して以来なかなか1番打者を固定できずにいたライオンズだが、そろそろこの穴も埋まりそうだ。そしてその穴を埋めてくれるのはもちろん若林楽人選手だ。

若林選手は1年目の今季は5月30日に左膝前十字靭帯損傷という大怪我を負ってしまい、手術を受け僅か44試合の出場にとどまってしまった。しかしこの44試合で記録した盗塁数は何と20個で、今季の盗塁王が24個だったことを考えると怪我が悔やまれるばかりだ。

盗塁失敗は8個で、成功率は71.4%だった。ルーキーでこれだけ走れたというのは見事としか言いようがない。もし怪我をするのがあと1週間でも遅ければ、若林選手が単独で盗塁王になっていた可能性さえあった。

若林選手が盗塁をする姿を見ていると、スタートからトップスピードに入るまでの時間が非常に短いし、何よりもスライディングでスピードをほとんど失っていないのが魅力的だ。この2つの特徴は片岡易之選手と共通している。

ライオンズには金子侑司選手というスピードを武器にする選手もいるわけだが、怪我を差し置いてトータルで見ていくと、現時点では若林選手がリードしていると言えるだろう。

走力だけではなく若林楽人選手の魅力

開幕直後の3〜4月は1軍のボールに手こずっているようにも見えたが、5月に入ってプロのスピードに慣れて来たのか、5月の月間打率は30日に怪我をするまで.333と打ちまくった。

若林選手は走力ばかりが注目されがちだが、来季はバッティングでももっと活躍してくれるはずだ。その根拠として、左踵でタイミングを取っている動作に筆者は注目したい。

投手がボールを投げる前に若林選手の左スパイクに注目してもらいたいのだが、踵を小刻みに踏んでいるのがお分かりいただけると思う。このモーションをタッピングというのだが、下半身を使ってタイミングを取る最も有効なモーションだとされている。

プロでも上半身の動作でタイミングを計っていたり、静から動の動きでスウィングしている選手が多い中、若林選手は下半身でタイミングを図り、動から動で振り、そしてしっかりとバットを振り抜いている。この3つのポイントは、プロで安定した成績を残すためには非常に重要な要素だ。

これらの要素に加え、もし今後若林選手がステイバックによる打ち方を身につけられれば、松井稼頭央選手のようにトリプルスリーを達成することも十分可能になるだろう。

今季の若林選手のフォームは長打は出にくいフォームだったわけだが、ステイバックを身につけられればもっと長打になりやすい角度、科学的には26〜30°の発射角度で打球を上げていけるようになるはずだ。

そしてライオンズには栗山巧選手というステイバックをマスターした大先輩がいるため、技術を学ぼうと思えばすぐにでも学び始めることができる。

ちなみにもし栗山選手がバットを短く持たないバッターだったなら、もっとホームランを打てるバッターになっていただろう。

栗山・中村コンビに取って変わるであろう若林・ブランドンコンビ

若林選手にはキャプテンシーも備わっている。恐らく将来的には栗山巧選手のような存在になっていくのではないだろうか。そして栗山選手にとっての中村剛也選手のように、若林選手はブランドン選手と切磋琢磨していくのだろう。

今季のオープン戦から序盤にかけても、この二人の相乗効果は決して低くはなかった。若林選手、ブランドン選手は個々としても非常に素晴らしい選手であるわけだが、オープン戦からお互いに高め合った結果が、開幕直後のこの二人の活躍だったと思う。

そしてドラフト1位だった渡部健人選手に対してライバル心を燃やしていたのもこの二人だったと思う。春季キャンプまでは渡部選手ばかりが注目されていたが、しかしこの二人はドラフト1位の同期を差し抜いて1軍で結果を出そうと虎視眈々とその機会を窺い、そしてモノにした。

近い将来、若林選手が1番センター、ブランドン選手がサードでクリーンナップを打つ時代もやってくるはずだ。まさに栗山選手と中村選手のようではないか!

また、かつて1番を打った秋山選手は非常にクレバーな選手だったわけだが、若林選手のプレーも実にクレバーだった。ただ、秋山選手は俊足であるにもかかわらず盗塁は上手くはなかった。そのためライオンズの9年間では僅かに112個(成功率63.2%)しか盗塁を決めていない。

112個だってもちろん立派な数字ではあるのだが、しかし秋山選手の走力とヒットの本数を考えると非常に少なかったという印象だ。成功率も高くはない。ちなみに片岡易之選手は12年間で320盗塁を決め、成功率は77.3%だった。

若林選手が1番打者として走ることにより生まれる相乗効果

片岡選手の数字にはまだ及ばないものの、これだけ走れる若林選手が出塁すれば、バッテリーとしては緩い変化球を投げにくくなる。するとストレート系の配球が多くなり、2番打者以降の打率も上がりやすくなる。

なかなか.280の壁を越えることができない源田壮亮主将も、若林選手が1番に定着すれば.280などすぐに越えていけるだろう。1番打者が走れるということには、そのような相乗効果もあるのだ。

今季は怪我人が続出して失速してしまったライオンズだったが、来季は本当に楽しみな布陣となってきた。先発3本柱も成長著しいし、空き続けていた1番打者の穴も埋まり、さらには先発左腕不足も解消しそうだ。

やはり先発は4本柱が望ましい。かつての松坂大輔投手、西口文也投手、豊田清投手、石井貴投手のように、現在の3本柱に来季はきっと隅田知一郎投手が加わってくるのだろう。

そして松井・大友・高木大成というトリオで得点力を上げたように、若林・岸・森トリオが来季はもしかしたら形成されるかもしれない。実はこれに関しては既に岸選手がそれを目指し、来季は「キシワカ」コンビを結成すると宣言している。つまり源田主将の2番の座も下から突き上げに遭っているということだ。そしてこのキシワカの姿は、かつての片岡・栗山コンビを彷彿させてくれるかもしれない。

あとはこの若林選手という核弾頭を活かすために、得点圏打率の高い4番打者の確率が急がれる。いくら若林選手が得点圏に進んでも、4番打者の得点圏打率が低ければチャンスをものにはできない。つまり山川穂高選手はホームラン数を増やそうとする前に、今季.172だった得点圏打率を何とかしなければならないということだ。

来季注目したいのはキシワカの機動力

大怪我を負い、来年の若林楽人選手はさらに強くなって帰って来てくれるはずだ。1月中にはもう普通にプレーができる状態まで戻っている見込みらしく、2022年の春季キャンプではまた溌剌としたプレーを見せてくれるのだろう。

松坂大輔投手は引退セレモニーで、若手選手に対し「体のケアにお金を使ってください」と語った。その言葉を若林選手も間近で聞き、身に染みたはずだ。

来季若林楽人選手が1番打者として1年間試合に出続ければライオンズの得点力も大幅に回復し、山賊打線時代とはまったく違う形で勝っていくチームになっていくだろう。

長打頼みの野球では日本シリーズには進めないということが2018〜2019年ですでに証明されている。だからこそ来季は山賊打線に回帰するのではなく、もっと繋がりを意識した野球でリーグ優勝し、間違いなく日本シリーズに駒を進めて行ってもらいたい。

そして松井稼頭央ヘッドコーチならば、かつて東尾修監督がそうしたように、キシワカの機動力で得点を挙げていく野球を存分に見せてくれるはずだ。キシワカが1・2番コンビとして機能し、源田主将を9番に下げざるを得なくなった時、ライオンズは本当に強いチームになるのだと筆者は思い描いている。

⚾️ 筆者:Kaz@Twitter

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