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髙橋光成

絶対的エース不在が長年続いているライオンズ

ライオンズの黄金時代は1994年に終焉を迎えたとされている。そして1995年からは東尾修新監督の下、黄金時代を築き上げたほとんどの選手がライオンズを去ってしまった状態で、新たなチーム作りが始まっていった。しかしそれでもライオンズには常に絶対的エースの存在があった。

絶対的エースとは、エース対決で負けないピッチングができ、日本シリーズなどの短期決戦でチームを勝たせられる投手のことだ。西武以降の絶対的エースの名を挙げていくと、東尾修投手、工藤公康投手、渡辺久信投手、郭泰源投手、石井丈裕投手、西口文也投手、松坂大輔投手、涌井秀章投手という流れになる。

菊池雄星投手もタイトルを獲るような活躍を見せてくれたが、やはり上位チームに対してまったく勝てなかったという意味では絶対的エースと呼ぶことはできないだろう。

ライオンズは涌井投手が去って以来、絶対的エース不在という時期がずっと続いている。これもやはりチーム防御率が長年低迷している大きな原因だと言える。

そして今、髙橋光成投手がエースの階段を登りつつあるわけだが、まだまだ絶対的エースと呼べる段階には至っていない。もちろん開幕投手であったわけで、エースと呼ぶべきなのだと思う。だが絶対的エースかと言われれば、まだそうではないと言うべきだろう。

髙橋光成投手の今季の防御率は3.78で11勝9敗という成績だったのだが、仮に3回自責9と大炎上したスワローズ戦の登板がなければ、防御率は3.37となっていた。3.78という数字はエースと呼ぶには相応しくない数字となってしまうが、3.37であればあと一息でタイトル争いに加われるような投手になっていける。

絶対的エースになるための髙橋光成投手の分岐点

髙橋投手は調子が良いと本当に素晴らしいピッチングを続けていくのだが、まだ時々不安定になってしまうことがある。いわゆる安定感を欠き、調子が悪くても試合を作る技術においてまだ未熟さが残っているということだ。だがこれに関しては髙橋投手は来年の2月でまだ25歳であり、経験を積んでいくうちに調子が悪くても試合を作ることのできる技術を磨いていけるはずだ。

ちなみに今季に関しては、髙橋投手は9〜10月にかけて一気に調子を落としてしまった。これが疲れから来るものだったのかは分からないのだが、しかし真のエースを目指すのであれば9〜10月に調子を落とすのは致命的だ。

CSや日本シリーズがある10月に最高のピッチングパフォーマンスを発揮できるのが、絶対的エースになるための絶対的条件となる。例えばいくらレギュラーシーズンで15勝をしたとしても、CSや日本シリーズでまったく活躍できなければエースとしての資質が問われることになってしまう。

あくまでも日本一になることを目指していくのならば、髙橋投手は来季は、どうのようにして9〜10月にピークを持っていくのかということを考えていく必要がある。また今季のように9〜10月に息切れしてしまうようでは、ライオンズも日本一になることはできないだろう。

ライオンズが2008年以来の日本一に返り咲くためには、髙橋光成投手にもう一段二段レベルアップしてもらわないと難しい。今季の髙橋投手は3〜4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月という7タームで大まかに見ていくと、6月、9月、10月という3タームで不調だった。つまりシーズンのだいたい42%の期間を不調の状態で過ごしてしまったということになる。

この42%という大まかな数字を10〜20%くらいにしていかなければ、真のエースと呼ばれることはないだろうし、タイトル争いに加わることも難しくなるだろう。つまり「チームの勝ち頭」というだけの、チーム内だけのエースという立ち位置で終わってしまう。

上述した絶対的エースたちの名をもう一度見返してもらいたい。全員がタイトルホルダーだ。しかし髙橋投手はリーグワーストの数字はこれまで何度も記録しているのだが、タイトル争いに加わったことはまだ一度もない。ここが髙橋投手の分岐点になっていくのだろう。

もし来季タイトル争いに加わる活躍を見せることができれば、いよいよ西口文也2軍監督の後継者として、再び背番号13を輝かせることができるだろう。そしてそうなった時、髙橋光成投手はエースの階段を登り切り、今度は絶対的エースの階段を登り始めていくのだと思う。

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近頃のプロ野球選手たちの一部では、バイオメカニクスに対する理解を深めている選手が増えてきている。中でもライオンズは選手個々はもちろん、球団としてもバイオメカニクスへの取り組みを強化し始めている。西武球団はマーケティング面においてすでに、NTTコミュニケーションズと協力関係にあり、メットライフドーム内の至る所でNTTコミュニケーションズが提供するIT技術が駆使されている。

だが西武球団とNTTコミュニケーションズとのパートナーシップはマーケティング面だけに留まらず、現在は動作解析ソフトという新たな分野でも協力関係にある。NTTコミュニケーションズが開発した動作解析ソフトは、すでに2021年の春季キャンプ中から使われているようで、実際に利用した平井克典投手も好感触を持ったようだ。

10年前はまるで手が届かなかった動作分析ソフト

筆者は野球のプロフェッショナルコーチとして仕事をし始めて今年で12年目になるのだが、10年くらい前に動作分析ソフトを提供する企業から営業を受けたことがある。筆者がパーソナルコーチを担当しているプロ野球選手やアマチュア選手に対して使える、動作分析ソフトのレンタル使用権に関する営業だったのだが、なんと月額は安くて数十万円、本格的に使う場合は100万円を越すような金額だった。もちろんパーソナルコーチングでそれだけの費用を捻出することはできないし、一応はその当時担当していたプロ野球選手にも聞いてみたのだが、その料金での利用に対して前向きな選手はいなかった。

その1〜2年後だろうか、iOSアプリでプロの現場でも利用できるレベルのアプリが登場してきた。それは月額1,000円もしない。もちろん月額数十万円のソフトと比べるとできることは限られるわけだが、しかし現場で実際に使いたい最低限の機能は備わっているため、このアプリに関しては筆者は今でもコーチング現場で使い続けている。

ちなみに近年よく耳にするトラックマンは、機器を購入したり数値を測定するだけであれば、頑張れば一般人でも払えるのではないか、というような金額なのだが、データ利用をするとなるととんでもない金額に跳ね上がる。とてもじゃないが個人で契約することは難しく、企業レベルじゃないとなかなか導入することはできない。ただ、ある大学では野球部の指導者が個人的に自腹でトラックマンを導入したという話を耳にしたため、もしかしたら料金は少しずつ下がってきているのかもしれない。もしくはデータ活用はせず、測定のみを行なっているのかもしれないが。

トラックマンとラプソード

ちなみにメットライフドームにもトラックマンが設置されている。バックネット裏のスコアボード付近に黒くて四角い物体が設置されていると思うのだが、それがトラックマン社製のレーダー測定器だ。だがこれがどのように活用されているのかは筆者には分からない。ただ数値を測定しているだけなのか、それともデータ活用がなされているのか。数年前に西武球団はIT戦略室を新設しているのだが、恐らくはそこでデータ活用されているのではないだろうか。

トラックマンはピッチャーが投げるボールや打球の球質をかなり正確に測定することができるのだが、バイオメカニクスという観点においては専門外だとも言える。だが今西武球団が運用し始めているNTTコミュニケーションズの動作解析ソフトは、映像から動作解析をしていくため、バイオメカニクスと球質の関係を相互で見ていくことができる。筆者も少しだけ実物を見たことがあるのだが、確かに選手側からするとトラックマンよりもずっと具体的に動作改善に活かせそうだと感じた。

ちなみにライオンズには平良海馬投手や髙橋光成投手のように、個人的にラプソードを所有している投手がいる。ラプソードもトラックマンのように球質をデータ化することができるのだが、トラックマンとの最大の違いは手軽に持ち運べるという点だ。

ラプソードの機器はDriveline Baseballでも使われている。Drivelineと言えばライオンズも若手投手を何人も送り込んでいるワシントン州のケント(シアトルの少し南)にあるバイオメカニクスの専門施設なのだが、そこに派遣されたチームメイトにラプソードの話を聞いたのかもしれない。ライオンズでは平良投手がまずはそれを個人的に購入し、その後平良投手に借りて使い始めた髙橋投手も自ら購入した。

ラプソードは手軽に持ち運べて、データをiPadで見ていくことができる。個人利用するには最適なサイズであるため、今後個人的にラプソードを利用するプロ野球選手は増えていくだろう。だがこのラプソードも基本的には球質などの数値を分析するのが得意な機器だ。もちろんエクステンション(ピッチャーズプレートとボールリリースまでの距離)やリリースアングルなどを計測することによって、それを動作改善に活かすことは可能なのだが、しかしあくまでもこれらは数値であり、厳密には動作そのものを分析した結果ではない。

テクノロジーの進化がパーソナルコーチを淘汰する?!

しかしNTTコミュニケーションズが開発したソフトは、上述した通り映像から動作分析を行っていく。そのため、自分自身が実際にどのようなフォームで投げているのかということをテクニカルに俯瞰視することができるのだ。ちなみに筆者のプロコーチとしての経験上、99%のピッチャーは頭で思い描いているフォームと、実際のフォームが一致していない。最も一致しているなと感じたのは杉内俊哉投手だ。

NTTコミュニケーションズのソフトと、ラプソードやトラックマンを併用することにより、実際にどのようなフォームになっていると、どういう球質のボールを投げることができるのか、ということをデータとして知ることができる。例えば調子が良い時と悪い時というのは必ずフォームに違いがあるのだが、以前であればその違いを筆者のようなプロコーチが経験を生かして短時間(短時間といっても映像を何時間も何時間も繰り返し見続ける)で見つけ出し、選手たちにデータを提供していた。だがこれらのソフトや機器があれば、そのような作業が一瞬で終わってしまい、筆者のようなパーソナルコーチが行っていた分析作業は必要がなくなる。

とは言えパーソナルコーチが不要になることはない。パーソナルコーチは、選手からいつ何を質問されても良いように、野球に必要な知識を常時頭の中でアップデートし続けておく必要がある。この作業ばかりは選手との会話や、フォームや試合を見る中で提供していかなければならず、まだしばらくの間は機械に仕事を奪われることはなさそうだ。しかし10年後どうなっているのかは分からず、少なくとも頭の中をアップデートし続けられないコーチはあっという間に淘汰されていくだろう。

今ライオンズに必要なのは経験豊富なコーディネイター

数年前までは、西武球団は老朽化が著しい球団として見られていた。それを理由にライオンズを去っていった選手もいると聞く。だが今ではトラックマンやNTTコミュニケーションズの動作分析ソフト、さらには個人で所有されているラプソードなど、まさに時代の最先端を走っているように見える。NTTコミュニケーションズのソフトとトラックマンのデータを活用できるコーチを育成、もしくは招聘することができれば、ライオンズでは入団した全員を一流選手に育て上げることも不可能ではなくなるかもしれない。

科学がすべてとは思わない。科学は非常に重要な要素であるわけだが、しかし実際にプレーするのは生身の人間だ。科学を取り込めば万事OKということはなく、重要なのは科学を上手く選手に落とし込めるコーチの存在だろう。そのようなコーチがライオンズにいるとはまだ思えない。西口文也コーチにしても、豊田清コーチにしても、バイオメカニクスを理解し切ってはいないはずだ。残念ながらバイオメカニクスというのは、プロ野球のコーチをしながら身につけられるような簡単なものではない。球団でコーチをしながら勉強をして身につけるにしても、5年10年という年月が必要になるはずだ。

そういう意味では、せっかくのトラックマンや動作分析ソフトをもっと選手にとってのプラス材料にすることができる専門家の存在がライオンズには必要だ。例えば西武球団はDriveline Baseballと繋がっているのだから、そこから専門家を派遣してもらうという手もある。Drivelineのコーディネイターたちはすでにラプソードや動作分析ソフトを使いこなしている。そのような専門家の力を借りれば、今シーズン中からでもデータを活かすことができるはずだ。

※ コーディネイター:バイオメカニクスの観点から選手の動作分析と動作改善を行なっていく専門家

そしてコーディネイターの力を借りてデータを上手く選手に落とし込めるようになれば、「ライオンズに入団すれば誰でも一流になれる」という印象をアマチュアから持たれる球団になっていくこともできる。そうすればドラフト戦略でも優位になり、ライオンズに入りたい、ライオンズに入れたいと思うアマチュア選手、親御さん、指導者も増えていくはずだ。そしてドラフト戦略が上手くいくシーズンが続いていけば、他球団のように補強に大金を注ぎ込まなくても、次々と良い選手を2軍から1軍に送り込めるようになる。そしてその状況こそが今、渡辺久信GMが見据えるライオンズの近未来なのではないだろうかと、筆者は密かに予想しているのである。

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西武 3 0 0 0 0 0 0 3
阪神 1 1 0 1 0 0 3

【継投】
髙橋光成〜平良海馬

髙橋光成投手がエースになるためにはQSだけでは不足

この試合先発マウンドに登ったのは開幕投手を務める予定の髙橋光成投手だった。だが最終的に7回降雨コールドで引き分けとなったこの試合、試合前からも雨が降ったり止んだりしていたのだろうか、もしかしたらマウンドが少し緩かったのかもしれない。足元が緩いマウンドではもちろんベストピッチすることは難しいし、いつも以上に踏ん張って投げなければならない分スタミナの消耗も激しくなる。そう考えると、5回3失点でよくまとめてくれたなと評価すべきなのだろう。

5回3失点と言うと数字的には非常に平凡な物だが、しかしこれが6回3失点となると、一応QSはクリアという形になる。マウンドが緩い状態だし、雨でボールが濡れてしまうこともあっただろう。そんな状況であってもしっかりと試合を組み立ててくれたというのは、これはエースの姿であると見てあげて良いのではないだろうか。

もちろん髙橋投手自身は、これまでエースとしての数字を残せたことはまだない。2019年には10勝6敗という数字で優勝に大きく貢献したわけだが、しかし防御率は4.51で、どちらかと言えば山賊打線の破壊力によって勝たせてもらったと言う方が正しい。だが今季は同じ二桁勝利をマークしていくにしても、4.51というような防御率に沈むことはないのではないだろうか。

さて、6回3失点であればQSはクリアと上述したわけだが、QSというのはエースが目指す記録ではないというのが筆者の考えだ。その理由は6回3失点だと防御率は4.50になるからだ。これはエースの数字とは言えない。エースであれば最低6回2失点という数字が必要で、これでも防御率は3.00だ。だがこれが7回2失点となると防御率は2.57となり、ようやくエースの数字となる。

髙橋投手には名実ともにライオンズのエースとなってもらいたい。そしてそのために目指すべき数字は6回3失点ではなく、最低限7回2失点を続け、月に1〜2回は135球程度で完投してブルペンを休ませられる投手になってもらいたい。これこそがエースの姿であると筆者は考えている。

だがオープン戦ここまでの髙橋投手のマウンド捌きは実に落ち着いている。自信を持ってボールを投げることができているのだろう。そのため髙橋投手のピッチングを見ていても安心感が漂っている。このような姿を見せ続けられれば、今季はシーズンを通してまったく大崩れしないピッチャーになれるのではないだろうか。

大阪桐蔭時代の相棒、森友哉捕手vs藤浪晋太郎投手

さて、この試合最も注目されたのはやはり森友哉捕手と藤浪晋太郎投手の、大阪桐蔭高校でバッテリーを組んでいたこの二人の対戦だろうか。筆者ももちろん注目していたわけだが、結果的には2打席対戦して二塁打と四球という内容だったため、森捕手の勝ちということになる。

しかし藤浪投手も森捕手に対し非常に良いボールを投げていたと思う。二塁打を打たれた初回、初球は外角いっぱいのストレートでファール。藤浪投手の力のあるストレートがここに決まれば、当てられてもなかなか前には飛ばないだろう。そして2球目は高めのボール球で、3球目は低めの力強いストレートだった。コースはやや真ん中付近だったと思うが、低めに制球された非常に良いボールだったと思う。

だがそのボールを上手くレフト方向に弾き返した森捕手のスウィングの方が一枚上手だった。やや擦り気味のバッティングのようにも見えたのだが、今季森捕手が取り組んでいる打ち方で、スピンがよくかけられた打球だった。そのためインパクトの見た目以上に飛距離が伸び、注目のルーキー佐藤輝明選手の頭上を越えるレフトへの大飛球となった。

今季、森捕手はこのような大飛球をスタンドインさせるシーンを何度も見せてくれるのではないだろうか。昨季までの森捕手はギャップヒッター(右中間・左中間を破る二塁打を多く打てるバッター)というタイプだったが、今季はホームランアーチストとしての打球をもうすでに何度も見せてくれている。

バッティングのコンディションとしては仕上がっていると思うのだが、今取り組んでいるバッティングはまだ完成とは言えないだろう。だが今後この打ち方がもっと馴染み、もっと上手く打球にスピンをかけられるようになれば、森捕手は簡単に3割30本という数字をオーバーしていくだろうし、スウィングによりどこかを痛めるリスクも減らせるはずだ。

背番号10を背負った打てる捕手と言えば、森捕手は高木大成選手の系譜を辿っているわけだが、数字的にはもう高木大成選手を超えているとも言える。大成選手は怪我に泣かされてしまったわけだが、森捕手には今後も怪我なく、山賊の一員として力強くライオンズを牽引してもらいたい。

高橋光成

3月26日金曜日、ライオンズはメットライフドームにオリックスバファローズを迎えて開幕カードを戦う。そして開幕戦の先発投手には髙橋光成投手が指名された。昨年の順位表だけを見ると、3位だったライオンズとダントツの最下位だったバファローズというカードになる。しかしライオンズは当然だが油断することはできない。

順位に関しては確かにライオンズの方が上だったわけだが、しかしチーム防御率はライオンズはの4.28に対しバファローズは3.97だった。そしてチーム打率もライオンズの.238に対しバファローズは.247で、共にライオンズの数字を上回っている。ホームラン数こそライオンズの107本に対しバファローズの90本だったが、盗塁数はライオンズの85個に対しバファローズは95個だった。

このように、実はライオンズはほとんどの数字でバファローズを下回っていたのが2020年の戦いだった。この数字だけを見ればライオンズが最下位でバファローズが3位だったとしてもまったく不思議はない。

しかもバファローズは今までのバファローズとは確実に変わってきている。ここ数年はチームに革命を起こせるような監督が就任することはなかったバファローズだが、今季正監督として指揮を執るのは中嶋聡新監督だ。捕手としての豊富な経験値と言い、今までのバファローズの監督にはなかった明るい性格と言い、中島監督にはバファローズを変えることのできる資質が備わっているように感じられる。

バファローズのように優勝からかなり遠ざかっているチームを勝たせるためには、やはり勝ち方を知っている人物が監督になるのが最適だと思う。そういう意味では中嶋監督は強かったオリックスを知っているし、ライオンズやファイターズでも勝つ野球を経験している。そういう意味でも今季のバファローズは決して侮れないと筆者は考える。

バファローズに対し抜群の数字を残した昨季の髙橋光成投手

ただし、開幕戦に関しては髙橋投手にやや分があると言えるだろう。昨季高橋投手はバファローズを相手にノーヒットノーラン一歩手前のピッチングを見せているし、バファローズ戦4試合で3勝1敗、防御率1.93という好成績を残している。バファローズに対し非常に相性が良いのが髙橋投手なのだ。

不思議なものでピッチャーには投げやすいチーム、投げやすい球場というものがある。髙橋投手の場合はそれがバファローズなのだろう。昨季の通算防御率3.74に対しバファローズ戦は1.93と、通算よりも2点近く失点が少なかった。辻発彦監督ももちろんこのようなデータを加味した上で開幕投手を選んだのだと思う。

仮に「昨年一番頑張ったやつ」が高橋投手であっても、もし他の投手がバファローズに対し圧倒的な数字を残していたならば、また選択肢は変わっていただろう。だが現実は「昨年一番頑張ったやつ」もバファローズに対し抜群の成績を残したのも高橋投手だった。

だが繰り返すが、だからと言って油断することはできない。中嶋聡監督も高橋投手を攻略するための作戦を考えると明言しているのだから、昨季とまったく同じように気持ち良く投げさせてもらうことはできないだろう。

そうなってくるとやはり鍵になるのは配球だ。森友哉捕手が如何に配球によってバファローズ打線を翻弄できるかが、開幕戦で新生バファローズを下すためには重要になってくる。

見えてきた表ローテと裏ローテの一番手投手

2月23日火曜日の初の対外試合となるホークス戦の先発は松本航投手が予定されている。ということは今季開幕時の表ローテの一番手は高橋投手で、裏ローテの一番手が松本投手になるということなのだろう。

今季はこのふたりを中心にローテーションを回していくというのが現段階で見られる形であり、残りの4枠をサバイバル形式で篩にかけていくことになるようだ。

開幕戦は143試合のうちの1試合と言われることもあるが、筆者はそうは思わない。開幕戦はその一年の戦いを占うためには非常に重要な一戦だし、ここでチームが勢い付けば開幕ダッシュを決めることもできる。

まずは最低限リーグ優勝を目指していくわけだが、そのためにも開幕ダッシュは必要であり、開幕ダッシュに失敗をすればそれを取り戻すのに長い時間がかかってしまう。今季をシーズンを通して優位に戦っていくためにも、まずは初戦でしっかりと貯金1を作り、その貯金を決して失わずに戦っていくという形が必要だ。

だからこそ筆者は開幕戦はただの1試合ではなく、絶対に勝たなければならない重要な一戦だと考えている。そして今季そこを任されたのがエース候補であり、西口文也投手コーチから背番号13を受け継いだ髙橋光成投手というわけだ。

西口文也投手の開幕戦の戦績は好投をしながらも2勝3敗と負け越している。高橋投手にはいつか、2勝3敗というこの数字以上の開幕戦での戦績を残せる投手になってもらいたい。そして背番号13をエースの系譜としてさらに価値ある番号に育ててもらいたい!

髙橋光成・開幕投手・初の大役

3月26日の開幕戦は西武髙橋光成投手vsオリックス山本由伸投手

2021年春季キャンプ最終日となった今日2月21日、辻発彦監督は今季の開幕投手に髙橋光成投手を指名した。以前より「昨年一番頑張ったやつに任せたい」と話していただけあって、よほどのことがない限りは前々から高橋投手を指名するつもりだったのだろう。

髙橋投手は高卒7年目にして初の大役を任されることになる。そして3月26日(金)メットライフドームに迎えるのはオリックスバファローズで、投げ合う相手は昨季最多奪三振のタイトルホルダーである山本由伸投手だと思われる。

山本投手は髙橋投手よりも学年は2つ下だが、今季年俸は髙橋投手の6700万円に対し、山本投手は1億5000万円と2倍上の差がある。タイトルは2019年に最優秀防御率、2020年に最多奪三振を獲得しているが、自己最多はまだ8勝で、通算成績は21勝13敗となっている。この数字だけを見ると1億5000万円に見合っているとは思えないが、しかし二度のタイトル獲得が高年俸につながっているのだろう。

一方の髙橋投手は通算32勝32敗で、数字的にはまだ殻を打ち破っているとは言えない。だが昨季はあわやノーヒットノーランという快投も披露しており、今ライオンズの中で最も成長著しい選手のひとりだ。

髙橋光成投手が開幕戦で山本由伸投手を上回るためには?!

髙橋投手が開幕戦で山本投手に投げ勝つには、とにかくできるだけ少ない走者でピッチングをまとめるということだろう。昨季のWHIPの数値を見ると高橋投手の1.20に対し、山本投手は0.94でリーグ最高の数字をマークしている。ちなみにWHIPとは、1イニングあたりに出してしまう走者の数を表しており、山本投手は1イニングに走者を1人出すか出さないか、ということになる。一方の髙橋投手は毎イニング1.2人の走者を出している、という計算だ。

このWHIPは防御率にも大きな影響を与えており、昨季は髙橋投手の3.74に対し、山本投手は2.20で、完投した場合山本投手の方が失点が1.5点少ないということになる。21勝13敗と、まだまだ際立った数字を残しているピッチャーではないが、しかしピッチングの内容は開幕投手を任されるレベルだけにエース級だ。

2019年に二桁勝利をマークしている髙橋投手に対し、8勝が自己最多の山本投手。獲得してきたタイトルを度返しすれば甲乙付け難い両者の戦績となっており、勝負の鍵となるのは四球数になってくるのではないだろうか。与四球率2.63の山本投手に対し、髙橋投手は3.29となっている。

髙橋投手とすれば無駄な四球を出さずに、どんどんストライクゾーンで勝負していくことができれば、昨季後半に見せてくれたような快投を今季も続けていくことができるだろう。そしてそのようなピッチングが続いていけば、相手チームとのエース対決が増えたとしても、同時に白星も増やしていけるはずだ。

今季のライオンズの開幕戦は、若きエース候補同士のぶつかり合いとなる。先発再転向3年目の山本投手と、ライオンズの成長株髙橋光成投手。この若々しいふたりの対決は、開幕戦6球場の中で最も注目すべきカードとなるはずだ。

髙橋光成

先発投手らしい投手になってきた髙橋光成投手

開幕投手筆頭候補の髙橋光成投手がここまで非常に良い調整を見せてくれている。2月17日に行われた紅白戦では2イニングスを投げて被安打1、無失点という上々の内容でマウンドを降りることができた。

今季25歳となる髙橋投手に、少しずつエースとしての自覚が芽生え始めているのかもしれない。1年前まではまだまだ若さや勢いによってバッターを捩じ伏せようとするピッチングが目立っていたのだが、昨季後半からはそのような姿があまり見られなくなった。

西口文也投手コーチの指導によるところが大きいらしいのだが、先発投手らしく、力みなく自分自身のボールを投げられる確率がかなり高くなって来ているように見える。

勢いに頼っていた頃はボールが暴れることが多く、自分が投げているボールを制御し切れていないように見えることが多かった。だが昨季後半あたりからは、しっかりと投げたいボールを投げられているように見え始めた。

それほど球数を投げないリリーバーであれば勢いで抑えてにいって良い場合もあるのだが、長いイニングを投げる必要がある先発投手はそれをすべきではない。まるでチェスをするかのように先々のカウントをイメージしながら配球を組み立て、抑えようが打たれようが、とにかく自分自身のイメージに極力近いボールを投げることが重要だ。

昨季後半戦以来、髙橋投手はそのようなスキルを身につけたように見える。

エースの自覚が芽生え始めている髙橋光成投手

今回の紅白戦で筆者が素晴らしいなと思ったのは、髙橋投手がブルペンで100球投げた後でマウンドに登ったという点だ。本人のイメージとしては、終盤8〜9回のマウンドに登る心境とコンディションを作ってのことだったのだろう。

もちろんこのような調整を行う先発投手は髙橋投手だけではないわけだが、しかし結果を追い求めたがる若手投手の場合、なかなかこのようなことができる心理的余裕を持つことができない。

しかし髙橋投手はもうすでに開幕戦に投げるつもりで調整をしているのだろう。今季初登板となる紅白戦の段階で、このような完投を意識しての調整を見せてくれた。これはまさに心理的余裕とエースとしての自覚の現れだと言えるのではないだろうか。

やはりエースは分業制が確立された現代野球であっても、しっかりと完投してリリーバーを休ませてあげるという役割を全うすべきだ。肩肘に不安を抱えていたり、ベテラン投手であれば話は別だが、髙橋投手は今季25歳というまだまだ発展途上の投手だ。それならばやはり試合終了までマウンドを誰にも譲らないという気概こそが望まれる。

多くのピッチャーが成績を積み重ねながら徐々にエースになっていくのに対し、髙橋投手からはすでにエースとしての自覚が感じられる。投手としてのタイプは違うわけだが、感じられる雰囲気としてはかつての涌井秀章投手のようだ。

長年真のエースが不在だったライオンズ

ライオンズにはしばらく絶対的エースの存在がなかった。涌井投手がライオンズを去って以来、上位チームのエースとの直接対決で投げ勝てる投手の存在がなかった。しかし今、髙橋投手がまさにそのようなピッチャーになろうとしている。

エースとは、相手エースとの直接対決に勝ってこそエースと呼ぶことができる。開幕戦に投げるということは、シーズンを通してほとんどのマウンドで相手チームのエースと投げ合う形になっていく。そこで勝てるのが真のエースであり、そこで勝てない投手をエースと呼ぶわけにはいかない。例え何らかのタイトルを獲得できたとしても。

ライオンズが2018年と2019年に勝ち切れなかったのは、真のエースの存在がなかったからだ。しかしこれから髙橋投手がそのような存在になっていってくれれば、かつてのように2年続けてCSで涙を呑むこともなくなるだろう。

一昔前までのライオンズはとにかく短期決戦に強かった。それはひとえに絶対的エースの存在があったからだ。西口文也投手、松坂大輔投手、涌井秀章投手のような。

今季髙橋投手が相手エースとの直接対決に勝ち続け、最多勝争いに加わるようなピッチャーに進化することがあれば、ライオンズの日本一はグッと近づくことになるだろう。

ファンが望んでいるのはCSに出場することではない。パ・リーグを制したのち日本シリーズで4勝することだ。2008年以来の覇権奪回を実現するためにも、髙橋光成投手の進化は不可欠だ。今季髙橋投手には、真のエースとしてチームを日本一に導く活躍を期待したい。

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高橋光成投手には球速を最優先にしないでもらいたい

2021年1月、高橋光成投手の自主トレは平良海馬投手と共に沖縄の宮古島で行われる。近年高橋投手は自主トレを菊池雄星投手と一緒に行っていたが、今年は菊池投手の元を巣立ち、後輩という立場から先輩という立場に自分を置いて自主トレを行うことにしたようだ。

後輩として合同自主トレに参加することと、先輩として合同自主トレを率いることとでは意味合いはかなり異なってくる。先輩という立場に自らを置いたということは、高橋投手自身に今後エースとなっていくための自覚が芽生えてきたということなのだろう。

だが筆者には一つ心配事がある。それは高橋・平良両投手共に球速アップに関するコメントをこのオフにしているという点だ。自主トレでは球速アップだけに主眼が置かれることがないようにと筆者は願っている。

球速は確かに遅いよりは速い方が良い。しかし球が速いだけで勝てるほどプロ野球は甘くないし、球が速くなくてもメンタルとボールを上手くコントロールできれば勝てる投手になれる。

そして何よりも重要なのは「制球>変化>球速」という公式を崩さないということだ。この公式を崩さなければ150km以上のボールを投げなくても勝ち続けることができる。しかしこれを「制球<変化<球速」としてしまうと、ただ球が速いだけの勝てない投手でプロ生活を終えることになってしまう。

今季もリリーフに専念する平良投手はまだしも、先発として長いイニングを投げなければならない高橋投手がこの公式を崩してしまえば、最多勝を狙える投手に進化することは難しいだろう。

ライオンズのエースとなるならば、やはり高橋投手には最多勝を獲ってもらわなければ困る。

先発転向の希望を持つ平良海馬投手

一方の平良海馬投手は165kmを目指すというようなコメントも残しているようだが、これは辻発彦監督の言葉通りナンセンスだ。もちろん野球が個人種目であれば165kmを投げられれば金メダルをもらえるかもしれない。しかし野球は常に相手がいるスポーツだ。

ライオンズのブルペンには増田達至投手や豊田清投手コーチという、しっかりと自らのボールを制御することによって好成績を残し続けている先輩とレジェンドの存在がある。平良投手は彼らの姿を追いかけるべきだろう。

今季も平良投手はリリーフに専念するわけだが、しかし平良投手自身は昨年に続き先発転向への希望を持っている。昨季は先発としてのテストも行われたようだが、今季に関しては最初からリリーフ専任として起用されることが西口文也投手コーチから通達されており、本人も納得済みのようだ。

将来的に先発に転向したいのであれば尚更、今のうちに球速以上に磨いておかなければならないことがある。球速は確かに、基本的には若いうちしか伸ばすことはできない。しかし若い今のうちに本当に磨いておかなければならないものを後回しにしてしまうと、30歳前後になってから苦労することになるだろう。

平良投手はまだまだ若い。今慌てて球速アップを目指さなくても、数年かけて今よりも速くすることが可能だ。だからこそ球速アップに主眼を置くのではなく、まずは制球と変化をもっともっと磨き、そのついでに球速もアップさせていく、くらいの気持ちで自主トレに挑んでもらいたい。そうすれば将来的には先発としても通用するピッチャーになることもできるはずだ。

もしかしたら将来的には、高橋投手と平良投手がローテーションの柱として回っていくこともあるのかもしれない。ふたりともまだまだ伸び盛りの選手なだけに、まずは怪我をしないための理論的なフォームの習得を目指し、球速以上に重要な勝てる投手になるためのスキルを、宮古島ではじっくりと磨いて来てもらいたい。

そして今季こそはこのふたりの力によって、ホークスをねじ伏せてもらいたい!