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陸上選手の走り方と野球の盗塁時の走り方は似て非なるもの

若林楽人の盗塁技術

ライオンズの秋季キャンプに臨時コーチとして秋本真吾コーチが参加した。秋本コーチは現役時代は200mハードルで活躍された選手で、元アジア記録保持者でもある(現在のアジア記録は渡部佳朗選手)。秋本コーチは現役引退後はプロ転向してスプリントコーチとして活躍しており、オリックスや阪神などでも臨時コーチを務めたり、内川聖一選手の個人コーチを務めたこともあった。

ただし秋本コーチの役目は盗塁数を増やすことではない。事実阪神もオリックスも、秋本コーチの指導を受けた後でも盗塁数はほとんど増えてはいない。秋本コーチが指導した直後の阪神のチーム盗塁数は70、オリックスは30〜40個台だった。

では秋本コーチとは何のためのコーチなのか?それは単純に速く走る技術や、怪我をしにくいフォームを指導するのが主な役目であるようだ。そもそも野球の盗塁というものは特殊な技術を要するプレーで、誰よりも速く走ることができる陸上選手であっても野球で盗塁数を増やせるとは限らない。

代走要員としてロッテと契約した飯島秀雄選手

事実、1969年にロッテオリオンズは代走要員として、ユニバーシアード(学生のためのオリンピック)で金メダル、その後アジア大会でも銀銅を獲得した飯島秀雄選手と契約をした。要するに当時としては、日本で一番足が速い人と契約をしたということだ。

だが飯島選手は3年間ロッテに在籍しながらも、通算の盗塁数は僅かに23個にとどまった。1969年は10盗塁(盗塁死8、ルーキー福本豊選手は4盗塁)、1970年は12盗塁(盗塁死9、福本選手は75盗塁で盗塁王)、1971年は1盗塁(盗塁死0、福本選手は67盗塁で盗塁王)という内訳だ。代走要員として期待されて117試合に出場したものの、通算23盗塁というのはロッテとしては期待外れも甚だしい結果となってしまった。ちなみに当然だが打席には一度も立っていない。

飯島選手は100mと200mでのメダリストだった。だが野球における盗塁ではせいぜい20m少々しか走らない。つまり100m走であれば20〜30m走ったところでトップスピードに入れば勝負できたわけだが、野球の場合はトップスピードに入る前に次のベースに到達してしまうことで、飯島選手は持ち味をまったく発揮することができなかった。

かつての盗塁王片岡易之選手の盗塁技術

ライオンズでは渡辺久信監督時代、片岡易之選手が3年連続50盗塁以上をマークし、4年連続で盗塁王に輝いていた。たが当時のライオンズの中で片岡選手の50m走のタイムはトップ3に入るか入らないかという程度で、当時の片岡選手のスピードは実は岸孝之投手の走力よりも劣っていた。

だが片岡選手にはスタートした直後にトップスピードに入るという技術と、スピードが低下しないスライディング技術があったため、50m走では勝てなかったとしても、20m少々の距離であれば圧倒的な速さを発揮することができた。

ではなぜ片岡選手は20m少々では圧倒的に速くても、50m以上になるとチームメイトに勝つことができなかったのか?その理由は単純で、片岡選手は非常に低い重心からスタートを切り、低い重心のまままるで前へつんのめるようなイメージで走っていた。そして実際につんのめる前にはスライディング姿勢に入っており、これができるからこそ盗塁では圧倒的なスピードを誇っていたのだ。

しかし片岡選手の走り方では20m少々なら最速を誇っても、50m以上の距離を走ることはできない。それこそ実際に前につんのめってしまうからだ。50m、100m、200mを走るためにはやや低い重心でトップスピードに入った後は、少し重心を上げてそのスピードに乗って走る必要が生じる。岸孝之投手らは、トップスピードに入ってからそのスピードに乗るのが非常に上手かったため、50m走ではライオンズではナンバー1の走力を誇っていた。

手術後の左膝靭帯がまだ馴染んでいなかった2022年の若林楽人選手

今回ライオンズが招聘した秋本コーチの指導により、ライオンズの盗塁数が増えることは期待できない。だがこの指導により選手たちが怪我をしにくい走り方をマスターできたり、二塁打三塁打を打った際のスピードへの乗り方は向上していくのではないだろうか。

2021年序盤は圧倒的な走力を誇っていた当時のルーキー若林楽人選手だったが、その後は怪我をして一年以上を棒に振ってしまった。今回秋本コーチを招聘したのは、選手たちのそのような怪我を防ぐことが目的となっていると思う。

若林選手は膝の靭帯を修復する手術を受けたわけだが、2022年シーズンはまだその靭帯が馴染んでいなかったという。そのため本来であれば足からスライディングすべき場面でも、足から滑ってまだ不安定な手術後の靭帯を再度痛めないようにヘッドスライディングすることが度々あった。その姿を見た首脳陣も無理はさせられないと判断したのだろう。2022年の若林選手の1軍帯同期間は短期にとどまった。

若林選手のトップスピードへの入り方やスライディング技術は、片岡易之選手に匹敵するレベルだ。そして走力のタイムだけを見れば恐らくは全盛期の片岡選手を上回るだろう。それほどの走力を持つ若林選手であったのだが、残念ながら2021年のルーキーイヤーは5月30日という、開幕からまだ2ヵ月ほどしか経っていない阪神戦で打球処理をした際に左膝前十字靭帯損傷という重傷を負ってしまった。

この怪我さえなければ、若林選手は50〜60盗塁を記録するような勢いで走っていた。そして松井稼頭央監督は間違いなくこの若林選手の走力に期待しているはずだ。これまで松井監督は新リードオフマン候補として外崎修汰選手源田壮亮主将らの名前を具体的には挙げているが、膝の状態次第では若林選手もその筆頭候補となるだろう。

松井監督は2軍監督時代にはリハビリに励む若林選手の姿を見ており、1軍ヘッドコーチ時代には膝を庇いながら1軍でプレーする若林選手の姿を見ていた。そのため松井監督としてもまだ無理はさせられないという意味で、ここまではあえて若林選手の名前を挙げずにいるのだろう。もしここで名前を挙げてしまうと、若林選手も靭帯がしっかりと馴染む前に無理をしてしまうこともあるからだ。

だが手術からほぼ20ヵ月経つ2023年の開幕までには、若林選手の膝も万全の状態となっていると思われる。しかも今オフは秋本コーチに怪我をしにくい走り方の指導も受けているため、今後は速く走ったとしても体への負荷は今まで以上に軽減させられるはずだ。そう考えると西武球団がこのタイミングで秋本コーチを招聘したのは非常に良い判断だったと思う。

将来のリードオフマン候補として期待したい川野涼多選手

筆者がライオンズのリードオフマンとして期待したいのはやはり若林選手と、もう一人は川野涼多選手だ。川野選手は来季は高卒4年目の選手で、学年的には若林選手よりも3つ下の若獅子だ。二遊間を得意とする選手なのだが、三塁を守ることもできる。

もしこの川野選手が来季スイッチヒッターとして1軍に食い込むことができれば、二遊間を源田主将と組むことができ、外崎選手を外野に戻すことも可能となり、外野のレギュラー不在という状況を一気に解決できるようにもなるだろう。もしくは中村剛也選手が年齢的にレギュラーを張れなくなって来た今、バッティング次第では三塁手としてチャンスを得ることもできるはずだ。

川野選手の体型は東尾監督時代の松井稼頭央選手によく似ており、二遊間のスイッチヒッターという共通点もある。そして自主トレは高校の2年先輩である三冠王村上宗隆選手と共に行なっているため、来季以降はバッティングでも期待できるはずだ。

今季はイースタンリーグで打率.250、盗塁2、盗塁死7という成績に終わっているが、出場試合数ははファームではチーム4番目の多さだった。つまり川野選手はそれだけ期待されているということだ。

ちなみに今季ファームで最も多くの試合に出場したのは昨季のドラフト1位渡部健人選手だったわけだが、大卒ドラフト1位で入団後、2年目の今季もファームでの打率は.184とまったく打てておらず、ホームラン数も10本にとどまっている。将来の主砲候補としては完全に高木渉選手に遅れを取っているし、来季は今季までのように多くのチャンスももらえなくなるだろう。

反面川野選手が与えられるチャンスは増えていくはずだ。今季2022年の時点で川野選手は1軍で8番サードというスタメンも経験している。今季は一度も一軍からは呼ばれなかった渡部選手とは対照的だ。

とは言え、もちろん川野選手が来季いきなりリードオフマンとして覚醒するとは思っていない。だが将来的には若林選手との1・2番コンビを組んでいく可能性は十分にあるだろう。

川野涼多選手が目指すのは松井稼頭央選手のトリプルスリーボディ

その川野選手の今オフの目標は、50m5.9秒というスピードを維持しながら、178cmの身長で78kgだった体重を82kgに増やすことのようだ。ちなみにトリプルスリーを達成した際の松井稼頭央選手は177cmで83kgだったようだ。この川野選手に1軍レベルのボールに振り負けないパワーが付いてくれば、来季からでも1軍で躍動する姿を見ることができるだろう。

球界でも誰よりも多い練習量を誇る村上宗隆選手を間近で見ているだけあり、川野選手もそこに倣って来季は飛躍してくるはずだ。この川野選手が1軍のレギュラーに食い込めるようになれば、ライオンズ打線にも一気に厚みが増してくる。

今季のラインズはリーグ最下位の60盗塁に終わったわけだが、若林選手がリードオフマンを務め、その若林選手から盗塁を成功させる技術を川野選手が盗み取ることができれば、チーム盗塁数は確実に三桁を超えていくだろう。

チーム盗塁数を増やすために山賊打線に欠けていた要素

そしてこのチーム盗塁数を増やすために欠かせないのがチームバッティングだ。松井稼頭央監督は今、打撃陣に対しこれを強く求めている。チームバッティングと言うと進塁打が真っ先に思い浮かぶわけだが、走者の盗塁をサポートするのもチームバッティングの一つだ。

だが山賊打線にはこの意識が希薄で、盗塁した走者が確実にセーフになっていたであろう場面で打者がファールを打ってしまうケースが数え切れないほどあった。松井稼頭央監督からすると、これも見ていて歯痒かったかずだ。

来季のライオンズは走者が走ったらそれをサポートすることも覚えなければならない。例えばカウントが追い込まれていなければストライクでも見逃したいわけだが、そこで見逃すのはもちろんのこと、わざと空振りをして走者を助けることも重要だ。辻監督時代のライオンズの打撃陣は、このように自らを犠牲にしてチームメイトを助けるプレーを見せることがほとんどなかった。

だが松井稼頭央監督はこのようなチームプレーを重視していることを監督就任以降幾度も明言されている。そしてそのようなチームプレー面でお手本となれるのが源田主将であり、栗山巧選手だ。栗山巧選手はまさに渡辺久信監督時代に、幾度となく片岡選手の盗塁をアシストして来た選手だ。

恐らく来季のライオンズで最もフィーチャーされるのはホームランではなく、このようなチームプレーやコンビネーションとなるはずだ。すると川野選手のようなタイプの打者にも多くのチャンスが与えられるようになるだろう。

そのようなことからも筆者はリードオフマン候補の筆頭として若林選手の名を挙げながらも、同時に川野選手の飛躍にも期待を寄せているのだ。近い将来この二人が同時に打線に加わってくれば、ライオンズ打線の繋がりは飛躍的に向上し、長打が減ったとしても得点力はアップしていくはずだ。そしてそれこそが今、松井稼頭央監督が目指している野球なのである。

松井稼頭央監督のスピード野球の成否はリードオフマンの固定が鍵

若林楽人

松井稼頭央監督が掲げるスピード野球を成り立たせる絶対条件として、やはりリードオフマンの固定は避けては通れない課題だ。ここをクリアすることができなければ、また日替わりでトップバッターを回すことになり、打線の安定感を産むこともできない。

辻発彦監督はここに金子侑司選手を据えようと幾度か試みたが、不調や怪我により金子選手がその期待に応えられることはなかった。その金子選手は来季は33歳という年齢になり、ここから金子選手がさらに数字を伸ばしていくことは現実的には考えにくい。となると金子選手は調子がいい時期であっても1番としてではなく、9番あたりで起用すべきだろう。

そして今季は、生涯ライオンズ宣言も飛び出した外崎修汰選手も1番に座る試合があった。確かに走力やパンチ力の魅力は大きいが、外崎修汰選手は盗塁王を狙えるほどの走力ではないため、パンチ力を生かすためにも6番以下での起用が望ましいように思える。下手に制限の多い1番を打たせるよりは、6番以下で自由に打たせてあげた方が外崎選手は打率を伸ばすことができるだろう。

ちなみにルーキーの蛭間拓哉選手を秋山翔吾選手のようなリードオフマンとして推す方も多いようだが、蛭間選手はやはり将来的には四番打者へと成長させていきたいため、スケールを大きく育成していくためにも1番での起用は避けたいところだ。ではライオンズのリードオフマンには誰が相応しいのだろうか?

やはり若林楽人選手を置いて他にはいないだろう。走力、守備力、打力のバランスも良く、盗塁王を狙えるだけの走力を持っているということは、2021年に怪我をする直前までの盗塁数ですでに証明してくれている。

若林選手は2021年に膝の大怪我を経験し、長いリハビリ期間を経て今季は1軍に復帰したわけだが、まだ膝が本調子ではなかったのか、1軍に定着するまでには至らなかった。だがここから秋季キャンプ、春季キャンプを経ていけば膝も怪我をする前の状態まで戻していけるはずだし、来季は完全復活にも期待を寄せたいところだ。

だが患部が膝だけに、心配が尽きないことも事実だ。例えば巨人の吉村禎章選手のように選手人生を通して膝の後遺症に悩まされることもある。だとしても現代医学はかなり進んでいるため、若林選手が吉村選手のようになることは可能性としては非常に低いと思われるが、それでも膝の怪我は完治したとしても油断すべきではないだろう。

かつての片岡易之選手にタイプが似ている若林楽人選手

若林選手は非常にパンチ力のある打者でもある。もちろんホームランを量産するタイプではないが、時々見せる長打の打球はかなり力強い。二桁に届く程度のホームランを打つだけの力はありそうだ。ただし若林選手はまだインサイドアウトの徹底ができていない。

スウィング前は左足をやや後ろに引いて開いて構え、ホームプレート側にスクエアスタンスで踏み込みながらステップしていくのだが、この左足のつま先が綺麗なスクエアになっていないのだ。例えば栗山巧選手の右つま先はステップ後はまっすぐ右打席側を向いていることが多い。だが若林選手の左つま先はステップ後に二塁手方向を向いていることが多いのだ。

このように体がやや開きやすいスウィングをしているためボールの内側を叩くインサイドアウトではなく、やや外側の面を叩くアウトサイドインになりやすい。そのため若林選手の強い打球によるヒットはほとんどがセンターからレフト方向で、一方逆方向へのヒットは力無い打球が比較的多い。

若林選手が打率.280〜.290以上を打ってリードオフマンとして固定されるためには、この体を開いて打つ癖を修正する必要があるだろう。と言ってもこれはメジャーチェンジではなく、マイナーチェンジで済む程度の修正ポイントであるため、本人や打撃コーチにその意識さえあれば秋季キャンプ中に動作改善は完了させられるはずだ。

つまり若林選手がリードオフマンとして活躍し続けるためには、栗山巧選手のような足部の使い方のマスターが必須になるということだ。この箇所の修正さえ済ませてしまえば、膝に問題がないようであれば打率.300弱の数字でリードオフマンとして固定されるようになるだろう。

ちなみに現時点での若林選手のタイプは、かつての片岡易之選手に非常によく似ていると言える。パンチ力があるのだがリードオフマンとしてはやや引っ張ったり、打ち上げることが多い。片岡選手ももし栗山選手のような足部の使い方ができていれば、幾度となく3割を打てていたはずだ。

古川雄大選手をスケールの大きなスイッチヒッターに育てるのはありだと思う

中には若林選手の走力を生かすためにスイッチヒッターへの転向を薦める向きもあるようだが、筆者はこれには反対だ。これが例えば松井稼頭央選手のように高卒でプロ入りして、プロ入り間もない10代のうちからスイッチの練習をしていくのならいいと思う。だが若林選手は大卒選手で、来季はもう25歳となる。

25歳という年齢でまだレギュラーになれていない状況を考えると、左打ちの練習に時間を割くよりは、右打席に集中してまずはレギュラーを掴み取ることの方が重要だ。

一方今年のドラフトで2指名された古川雄大選手に関しては、本人の意向次第では松井稼頭央選手のようなスケールの大きなスイッチヒッターになる挑戦をしてもいいと思う。だが若林選手に関してはいくら走力を生かすためだとはいえ、どっちつかずの打者にならないようにするためにも、ここからのスイッチ転向は避けた方が無難そうだ。

若林選手には上述の通りパンチ力がある。一般的な1番打者タイプの選手は、時として当てるだけのバッティングをしがちだ。これは追い込まれた後に空振り三振をしにくいという意味ではプラスに働きもするのだが、しかし追い込まれる前に当てるだけのバッティングをしてしまう選手が大成することは難しい。

だが若林選手はしっかりとバットを最後まで振り抜くスウィング力を持っている。だからこそ長打も打てるわけなのだが、このパンチ力に加えて栗山巧選手のような正確性が身に付けば、若林選手は間違いなく不動のリードオフマンとなっていくだろう。そして毎年のように盗塁王にもなれるはずだ。

スワローズ打線にはあって山賊打線にはなかったもの

実はここだけの話、筆者は山賊打線は好きではなかった。なぜなら打線にまったく繋がりが見えてこず、ライオンズ打線がまるで個人競技のように見えていたからだ。198本塁打を記録した2008年のライオンズ打線は山賊打線以上の破壊力を誇っていたわけだが、打線の繋がりはあった。特に片岡選手と栗山選手のコンビネーションはまるで芸術品のようだった。そして打線が個人競技ではなくしっかりと線になっていたからこそ、この時のライオンズは短期決戦でも強かった。

打線が線として繋がっていかない場合、野球が常に1対2になってしまう。つまり打者1人vsバッテリーという意味だ。すると打者にとっては分が悪い状況になってしまい、どうしても後手後手のバッティングになってしまう。

逆に打線が線としてしっかりと機能していれば、これが1対2ではなくて9対2になる。そして常に9対2で戦えているのがこの二年間の東京ヤクルトスワローズだ。スワローズ打線は高津監督の戦略の下、各打者が「なんとしてでも次の打者に繋げよう」という意識で打席に立っている。そしてそれが画面を通しても伝わってくるのだ。

三冠王を獲得した村上選手でさえも繋ぎの精神を決して忘れない。今季はやや数字を落としたとはいえ山田哲人選手も然りだ。タイトルホルダーである主力打者たちがこのように繋ぎの精神を持っているのだから、スワローズがリーグ連覇したことも、昨日のバファローズとの日本シリーズでも3点ビハインドの9回裏という土壇場で同点に追いついたのにも驚きはなかった。

村上宗隆選手のフォーム分析〜高い打率で本塁打を量産できる理由

一方山賊打線にはそのような繋ぎの意識が希薄だった。もちろんライオンズナインにも繋ぎの意識がまったくなかったわけではないと思うのだが、スワローズのような勝てるチームと比較をするとそれはあまりにも希薄だった。となると来季ライオンズ打線をしっかり機能させるためには、松井稼頭央監督がどれだけ打線に繋ぎの意識を徹底させられるかが鍵となるのだろう。

そしてその象徴ともなりうるのが1番若林選手、2番源田主将の1・2番コンビだ。いや、これは1番源田主将、2番若林選手でもいいだろう。若林選手に9つの打順の中で最も制限が多い2番を打たせることにより、さらに野球観に広がりを持たせることは将来に向けて大きなプラスとなるはずだ。

打線に繋がりを持たせるためには、何はともあれ1・2番のコンビネーションが最重要だ。ここに繋がりが生まれなければ打線全体に繋がりが生まれることもない。だからこそライオンズはリードオフマンの固定はもはや待ったなしの状況となっている。

若林楽人選手が不動のリードオフマンになるための鍵

秋山翔吾選手のメジャー移籍直前の四球率は打席数に対し11.5%だった。一方の若林選手は2021年の怪我をする前の数字を見ると6.3%という数字だ(2022年は4.2%)。これは片岡易之選手に近い数値だ。若林選手がリードオフマンとして固定されていくためには、この数字をせめて10%弱くらいにはすべきだろう。

ただ、打力自体はまだそれほど恐れられてはいない若林選手の場合、ここまでは比較的ストライクゾーンで勝負してもらえることが多かった。特にルーキーイヤーはそれが顕著で、もしもっとボール球を使われるようになってきたら、若林選手としてはどれだけ四球を増やせるかがリードオフマンとしての真価が問われるポイントとなるはずだ。

ちなみにまだホームラン数がそれほど多くなかった1999年の松井稼頭央選手のこの数字は9.2%だった。若林選手としては、この松井稼頭央選手の数字が一つの目安となっていくのではないだろうか。リードオフマンという主力となれば、ストライクゾーンで勝負してもらえる機会はどんどん減っていく。そうなった時鍵となるのが如何にファーストストライクを強振していけるかという点と、追い込まれたあとにボール球を見極められる選球眼だ。

ファーストストライクの強振と追い込まれた後の選球眼を今までよりも一段上のレベルに持っていくことができれば、2023年の若林選手は、いきなり打率.290とまでは行かずとも、.280程度で40盗塁以上マークできるような活躍を見せられるだろう。

だが逆にファーストストライクでのミスショットが増えてしまうとバッティングが後手後手になってしまい、追い込まれてから難しいボールを振っていかなければならない状況が増え、それに伴い四球数も減り、打率も上がらなくなってしまう。そうなるか否かの鍵がまさにファーストストライクと追い込まれてからの選球眼ということになる。ただしこの追い込まれてからの選球眼は、ファーストストライクで強振できることが前提だ。

年齢的にも能力的にも、やはり若林選手が不動のリードオフマンに成長することがライオンズとしては最も望ましい。若林選手がシングルヒットや四球で出塁すれば、そこには盗塁と合わせて二塁打同等の価値が生まれる。そして2番源田主将の進塁打などによりチャンスは拡大され、3〜4番は外野フライさえ打てれば打点を稼げるという状況になる。これこそが打線の繋がりであり、クリーンナップの打率を上げていくための必須事項となる。

しかし1〜2番が連動してこないと、3〜4番は長打を打たなければ打点を挙げられなくなり、そのような状況は打者を個に走らせやすく、打線の繋がりをさらに欠くことになってしまう。そうならないためにも、やはり来季は若林選手には不動のリードオフマンとしてグラウンドを駆け回ってもらいたいのだ。

そして守備範囲が広大な若林選手がセンターに固定されれば、森友哉捕手の去就如何ではセンターラインがようやく固まることになる。やはり野球というスポーツでは、バッテリーを中心としたセンターラインが不安定だとなかなか勝てない。そのため来季ライオンズが安定した戦いを見せていくためにも、若林選手が1番に固定されるか否かは非常に大きな要素を孕んでいると筆者は考えている。

若林楽人

5月までで20盗塁をマークした新たなスピードスター・若林楽人選手

秋山翔吾選手がメジャー移籍して以来なかなか1番打者を固定できずにいたライオンズだが、そろそろこの穴も埋まりそうだ。そしてその穴を埋めてくれるのはもちろん若林楽人選手だ。

若林選手は1年目の今季は5月30日に左膝前十字靭帯損傷という大怪我を負ってしまい、手術を受け僅か44試合の出場にとどまってしまった。しかしこの44試合で記録した盗塁数は何と20個で、今季の盗塁王が24個だったことを考えると怪我が悔やまれるばかりだ。

盗塁失敗は8個で、成功率は71.4%だった。ルーキーでこれだけ走れたというのは見事としか言いようがない。もし怪我をするのがあと1週間でも遅ければ、若林選手が単独で盗塁王になっていた可能性さえあった。

若林選手が盗塁をする姿を見ていると、スタートからトップスピードに入るまでの時間が非常に短いし、何よりもスライディングでスピードをほとんど失っていないのが魅力的だ。この2つの特徴は片岡易之選手と共通している。

ライオンズには金子侑司選手というスピードを武器にする選手もいるわけだが、怪我を差し置いてトータルで見ていくと、現時点では若林選手がリードしていると言えるだろう。

走力だけではなく若林楽人選手の魅力

開幕直後の3〜4月は1軍のボールに手こずっているようにも見えたが、5月に入ってプロのスピードに慣れて来たのか、5月の月間打率は30日に怪我をするまで.333と打ちまくった。

若林選手は走力ばかりが注目されがちだが、来季はバッティングでももっと活躍してくれるはずだ。その根拠として、左踵でタイミングを取っている動作に筆者は注目したい。

投手がボールを投げる前に若林選手の左スパイクに注目してもらいたいのだが、踵を小刻みに踏んでいるのがお分かりいただけると思う。このモーションをタッピングというのだが、下半身を使ってタイミングを取る最も有効なモーションだとされている。

プロでも上半身の動作でタイミングを計っていたり、静から動の動きでスウィングしている選手が多い中、若林選手は下半身でタイミングを図り、動から動で振り、そしてしっかりとバットを振り抜いている。この3つのポイントは、プロで安定した成績を残すためには非常に重要な要素だ。

これらの要素に加え、もし今後若林選手がステイバックによる打ち方を身につけられれば、松井稼頭央選手のようにトリプルスリーを達成することも十分可能になるだろう。

今季の若林選手のフォームは長打は出にくいフォームだったわけだが、ステイバックを身につけられればもっと長打になりやすい角度、科学的には26〜30°の発射角度で打球を上げていけるようになるはずだ。

そしてライオンズには栗山巧選手というステイバックをマスターした大先輩がいるため、技術を学ぼうと思えばすぐにでも学び始めることができる。

ちなみにもし栗山選手がバットを短く持たないバッターだったなら、もっとホームランを打てるバッターになっていただろう。

栗山・中村コンビに取って変わるであろう若林・ブランドンコンビ

若林選手にはキャプテンシーも備わっている。恐らく将来的には栗山巧選手のような存在になっていくのではないだろうか。そして栗山選手にとっての中村剛也選手のように、若林選手はブランドン選手と切磋琢磨していくのだろう。

今季のオープン戦から序盤にかけても、この二人の相乗効果は決して低くはなかった。若林選手、ブランドン選手は個々としても非常に素晴らしい選手であるわけだが、オープン戦からお互いに高め合った結果が、開幕直後のこの二人の活躍だったと思う。

そしてドラフト1位だった渡部健人選手に対してライバル心を燃やしていたのもこの二人だったと思う。春季キャンプまでは渡部選手ばかりが注目されていたが、しかしこの二人はドラフト1位の同期を差し抜いて1軍で結果を出そうと虎視眈々とその機会を窺い、そしてモノにした。

近い将来、若林選手が1番センター、ブランドン選手がサードでクリーンナップを打つ時代もやってくるはずだ。まさに栗山選手と中村選手のようではないか!

また、かつて1番を打った秋山選手は非常にクレバーな選手だったわけだが、若林選手のプレーも実にクレバーだった。ただ、秋山選手は俊足であるにもかかわらず盗塁は上手くはなかった。そのためライオンズの9年間では僅かに112個(成功率63.2%)しか盗塁を決めていない。

112個だってもちろん立派な数字ではあるのだが、しかし秋山選手の走力とヒットの本数を考えると非常に少なかったという印象だ。成功率も高くはない。ちなみに片岡易之選手は12年間で320盗塁を決め、成功率は77.3%だった。

若林選手が1番打者として走ることにより生まれる相乗効果

片岡選手の数字にはまだ及ばないものの、これだけ走れる若林選手が出塁すれば、バッテリーとしては緩い変化球を投げにくくなる。するとストレート系の配球が多くなり、2番打者以降の打率も上がりやすくなる。

なかなか.280の壁を越えることができない源田壮亮主将も、若林選手が1番に定着すれば.280などすぐに越えていけるだろう。1番打者が走れるということには、そのような相乗効果もあるのだ。

今季は怪我人が続出して失速してしまったライオンズだったが、来季は本当に楽しみな布陣となってきた。先発3本柱も成長著しいし、空き続けていた1番打者の穴も埋まり、さらには先発左腕不足も解消しそうだ。

やはり先発は4本柱が望ましい。かつての松坂大輔投手、西口文也投手、豊田清投手、石井貴投手のように、現在の3本柱に来季はきっと隅田知一郎投手が加わってくるのだろう。

そして松井・大友・高木大成というトリオで得点力を上げたように、若林・岸・森トリオが来季はもしかしたら形成されるかもしれない。実はこれに関しては既に岸選手がそれを目指し、来季は「キシワカ」コンビを結成すると宣言している。つまり源田主将の2番の座も下から突き上げに遭っているということだ。そしてこのキシワカの姿は、かつての片岡・栗山コンビを彷彿させてくれるかもしれない。

あとはこの若林選手という核弾頭を活かすために、得点圏打率の高い4番打者の確率が急がれる。いくら若林選手が得点圏に進んでも、4番打者の得点圏打率が低ければチャンスをものにはできない。つまり山川穂高選手はホームラン数を増やそうとする前に、今季.172だった得点圏打率を何とかしなければならないということだ。

来季注目したいのはキシワカの機動力

大怪我を負い、来年の若林楽人選手はさらに強くなって帰って来てくれるはずだ。1月中にはもう普通にプレーができる状態まで戻っている見込みらしく、2022年の春季キャンプではまた溌剌としたプレーを見せてくれるのだろう。

松坂大輔投手は引退セレモニーで、若手選手に対し「体のケアにお金を使ってください」と語った。その言葉を若林選手も間近で聞き、身に染みたはずだ。

来季若林楽人選手が1番打者として1年間試合に出続ければライオンズの得点力も大幅に回復し、山賊打線時代とはまったく違う形で勝っていくチームになっていくだろう。

長打頼みの野球では日本シリーズには進めないということが2018〜2019年ですでに証明されている。だからこそ来季は山賊打線に回帰するのではなく、もっと繋がりを意識した野球でリーグ優勝し、間違いなく日本シリーズに駒を進めて行ってもらいたい。

そして松井稼頭央ヘッドコーチならば、かつて東尾修監督がそうしたように、キシワカの機動力で得点を挙げていく野球を存分に見せてくれるはずだ。キシワカが1・2番コンビとして機能し、源田主将を9番に下げざるを得なくなった時、ライオンズは本当に強いチームになるのだと筆者は思い描いている。

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
楽天 1 0 1 0 1 0 2 1 0 6 9 0
西武 0 0 0 0 2 0 0 0 1 3 8 1

【継投】
●今井達也(1敗)〜佐野泰雄〜宮川哲〜ギャレット〜伊藤翔〜田村伊知郎

【ホームラン】
若林楽人(プロ1号)

観衆:7,390人、試合時間:3時間39分

野手大量指名ドラフト以降燃えている山野辺・呉両選手

今夜の先発マウンドに登ったのは今井達也投手だった。結果的には5イニングスで104球を投げて被安打5、四死球6、失点3という内容で、決して満足のいくものではなかった。これでライオンズはイーグルスに2連敗となってしまったわけだが、負けてしまったものをとやかく言っても始まらない。残念ながら首位は陥落してしまったが、また明日から良い戦いを見せてくれればそれで良いと思う。

試合としては3-6で敗れてしまったが、打線は8安打を放ち3点を奪っている。スタメンクラスの野手4人を欠いている状態を考えれば、打線の方は善戦してくれていると思う。状況を考えれば打線が沈黙を続けてしまったとしても不思議ではないほど離脱者が出ているのだが、今季は1軍定着を目指す若獅子たちが本当にナイスバッティングを見せ続けてくれている。

山野辺翔選手や呉念庭選手は今季に対しては危機感もあったはずだ。その理由は渡辺久信GMが、昨年のドラフトで野手を大量指名したからだ。現にそのドラフトで指名されたルーキー3人がここまでの試合でホームランを打っている。これだけルーキーたちが躍動しているのだから、山野辺選手や呉選手としては、昨年までと同じことをしていたら整理リストに名前が入ってしまう。そんな危機感がふたりを掻き立てているのではないだろうか。

呉選手は今夜も長打を放っているし、山野辺選手もタイムリーヒットと犠牲フライで2打点を挙げている。月末までにはメヒア選手スパンジェンバーグ選手が1軍に合流する見込みとなっているが、それまでは何とかこの若獅子たちの躍動でチームの勢いを保ってもらいたい。そしてメヒア選手とスパンジェンバーグ選手が合流した後でも、簡単には外国人選手たちにポジションを明け渡さないというような活躍を今後も期待したい。

若林楽人選手にも飛び出したプロ1号ホームラン

ここまでルーキーのブランドン選手、渡部健人選手のルーキー2人がホームランを放っていたのだが、今夜は3人目、これまたルーキーの若林楽人選手がプロ1号をマークした。

初球は外角のストレートを見逃し、2球目はインハイのスライダーを空振りしてカウント1-1となった3球目、真ん中外寄りに入ってきた甘いカーブを僅かに泳がされながらも上手くバットに乗せていった。プロ1号はレフトスタンドへの一発となった。それにしても今季のルーキーたちは本当に失投を見逃さない。1軍レベルの厳しいボールにはまだ対応し切れていないルーキーたちだが、しかし甘いボールが来るや否や積極的に振っていく。この物怖じしない積極性が好結果に結びついているのだろう。

1年目は、相手投手の配球データを頭に入れるだけで精一杯だと思う。だが実際のところはデータは役に立つようで立たないことも多い。当然だがデータ通りのピッチングになることなど稀有だからだ。そうなるとあとは経験値が頼りになってくるわけだが、ルーキーたちにその経験値はない。だからこそ今は結果を恐れず、積極的に打てると思ったボールを振っていくことが大事なのだと思う。

ルーキーたちがこのまま活躍し続けられることはないだろう。いつか調子が落ちてくる時がやってくる。だがそんな時でもくよくよしたり、考え過ぎたりはせず、相手投手の胸を借りるつもりで自分のスウィングを貫き続けて欲しい。そうすればきっと、日本シリーズが終わるまで1軍に居続けることができるだろう。

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2021年03月10日(水) ドラゴンズvsライオンズオープン戦

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
西武 3 0 7 0 1 3 0 0 0 14
中日 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2

継投

今井達也〜上間永遠

ホームラン

若林楽人(1号)、ブランドン(1号)

ルーキーコンビの若林選手・ブランドン選手がアベックホームラン

3月9日、10日と行われた中日戦。ライオンズは山賊打線が爆発して2連勝したわけだが、見た感じではライオンズ打線が素晴らしかったというよりは、ドラゴンズの投手陣があまりにも出来が悪かったように筆者の目には映った。10日に関してはドラゴンズは開幕投手の福谷投手が先発マウンドに登ったわけだが、3回を投げて被安打12、失点10という内容だった。確かに完全に打ち崩したライオンズ打線も素晴らしかったわけだが、しかしこの2試合の打線の爆発が本物であると言い切るには時期尚早だろう。

さて、10日のこの試合でまず注目をしたいのはやはりルーキーコンビだろうか。若林楽人選手ブランドン選手が共にオープン戦1号ホームランを放っている。ドラフト制後、西武のルーキーコンビがオープン戦でアベックホームランを放つのは初めての出来事だったらしい。

若林楽人選手のオープン戦1号ホームラン

まず若林選手のホームランだが、これは完全に福谷投手の失投だ。初球のカーブがど真ん中に入ってきて、まさに「打ってください」と言わんばかりの甘いボールだった。しかし甘いボールだったとはいえ、ルーキーがそれを見逃さずにしっかりと仕留めたことは見事だったと思う。

若林選手は打率こそまだ.105とプロの水に慣れ切ってはいないのだが、しかし守備での貢献度を考えると、打率を1割増として見ても良いのではないだろうか。先日のマリーンズ戦でも正確な送球で二塁打を阻止しているし、球際、フェンス側での強さも発揮している。

若林選手は決してホームランバッターではなく、今日のホームランによって今後もホームランを期待することは酷だと思うのだが、シュアなバッティングは今後の期待感を大きく持たせてくれる。基本的にはレフトの穴を埋められるように頑張っているというのが若林選手の現状であるわけだが、しかし打率.250程度打つことができれば、金子侑司選手からセンターのポジションを奪う可能性だって今後は出てくるだろう。

守備力に関してはもうすでに合格点をもらっていると思う。あとは1軍の打席でどれだけ積極的に自分のスウィングをしていけるかどうかで、開幕1軍、いや、開幕スタメンというポジションも見えてくるだろう。若林選手にはルーキーだからといって遠慮することなく、どんどんポジションを奪いに行ってもらいたい。そして若林選手がこれだけ躍動してくると、金子選手も木村文紀選手もおちおちしていられなくなる。

ブランドン選手のオープン戦1号ホームラン

続いてブランドン選手の一発だが、これも若林選手同様初球打ちだった。打ったのは福投手のど真ん中に入ってきたカットボールだ。134kmという大した球速が出ていないこのレベルのカットボールが真ん中に入ってくれば、打たれるのも当然だ。この1球もやはり失投だったわけだが、しかしその失投を見逃さなかったブランドン選手のバッティングは見事だった。

ブランドン選手は開幕サードを目指して奮闘している。まだまだ打撃にも守備にも荒さがある選手ではあるが、一発の魅力は大きい。しかもそれだけではなく、この試合ではセンター前ヒットも2本放っており、結果的には4打数3安打5打点という暴れぶりだった。

一時期はホームランを打ってもその後消極的に簡単にアウトになってしまうことから、辻発彦監督も苦言を呈すことが多かった。しかし監督のその言葉を素直に受け止めたのだろう。ここ数試合の出場場面を見ていると、ヒットを打っている時はもちろん、アウトになっている時でも積極的なスウィングが増えてきているように見える。

この試合2打席目でのセンター前ヒットも、2球目に顔の近くに来た145kmのストレートを臆せず振りにいってファールにしている。そして続く3球目、真ん中に入ってきたストレートをセンターへと弾き返した。そして9回の5打席目では2球目の真ん中低めのスライダーを再びセンターへと弾き返した。積極的にボールに食らいついていこうという姿勢を強く感じさせてくれた今日のブランドン選手だったと思う。

開幕サードの座は佐藤龍世選手も虎視眈々と狙っているわけだが、しかし現時点でのアピール度はブランドン選手の方がずっと上だと言わざるを得ない。佐藤選手も昨年の汚名返上と行きたい今シーズンではあるが、現時点では多少の活躍だけでは開幕スタメンの座を勝ち取ることはできないだろう。それくらいブランドン選手が非常に良い活躍を見せてくれいている。

開幕ローテーション入りへの期待がかかる上間永遠投手

話は変わって先発した今井達也投手と二番手の上間永遠投手のピッチングも見事だった。今井投手に関してはこれくらいやってもらわなければ困るわけだが、上間投手に関してはここまで期待以上の活躍を見せてくれている。

徳島インディゴソックスからライオンズ入りして2年目の投手であるわけだが、制球力も安定しているし球種も豊富だ。今季は開幕路ローテーションにニール投手が加われない不安も大きかったわけだが、意外とこの上間投手がその穴をサラリと埋めてくれるかもしれない。

球数を見ても今日は4イニングスを投げて61球と、理想的な球数でまとめている。球数を必要以上に増やさず、1イニング当たり15球で抑えられるピッチャーというのは大崩れすることが少ない。逆に球数が増えがちなピッチャーは、昨季は安定感に欠いた今井投手にようにビッグイニングを作ってしまうケースが多い。そういう意味では上間投手はここまで、長いイニングを投げるピッチャーとしては理想的な投球を続けている。

ここまでの流れでは開幕ローテーションに当確していると思われるのは開幕投手の髙橋光成投手、裏ローテの一番手だと思われる松本航投手、そして今日好投した今井投手ということになると思うのだが、もし上間投手があと1〜2試合投げても大崩れしなかったなら、上間投手の名が開幕ローテーションに加わる可能性も非常に高いのではないだろうか。

今季も投手陣に関する下馬評がまぁまぁ低いライオンズであるわけだが、筆者個人としては今年何度も書いてきた通り、今季の投手陣は非常に良い形で仕上がってきていると見ている。選手個々のネームバリューだけを見ればホークスには劣ってしまうわけだが、しかしある程度完成してしまっているホークス投手陣に対し、ライオンズの先発投手陣はまだまだ発展途上にある投手たちばかりだ。つまり現状のホークス投手陣を、ライオンズの投手陣が上回るのも時間の問題であるというのが、筆者の率直な意見だ。