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山川穂高

柳田悠岐選手から差をつけられるばかりの山川穂高選手

今オフの契約更改でホークス柳田悠岐選手の年俸は1,000万円アップし、推定6億2,000万円となった。そしてこの時の会見で柳田選手が口にしたのは「不甲斐ない成績だった。これが今の実力」という言葉だった。ちなみに柳田選手の今季の成績は打率.300、本塁打28、打点80、得点圏打率.298で、一方山川穂高選手は打率.232、本塁打24、打点66、得点圏打率.172だった。

柳田選手のこの数字が不甲斐ないものとなってしまうのならば、山川選手の数字は一体どう表現したら良いのだろう。確かに年俸の額はまったく違う。柳田選手の6億2,000万円に対し、山川選手の来季年俸は推定1億3,000万円だ。6億という柳田選手の年俸を鑑みれば、確かに今季の成績は不甲斐ないということになってしまうのかもしれない。

だが山川選手が自ら掲げた来季のテーマは12球団ナンバー1の4番打者になることだ。ということはこの柳田選手を上回る必要があるということになる。年俸の額はさておき、打率・本塁打・打点・得点圏打率などすべてで柳田選手を上回れなければ、12球団ナンバー1の4番打者にはなれない。

近年の山川選手のビッグマウスには筆者は少し聞き疲れて来たのだが、志が高いこと自体は良いことだと思う。だがもう少し謙虚な言動を見せた方が良いのでは、と思うこともしばしばあるのが筆者個人の正直な意見だ。

パ・リーグ他球団に攻略法を確立された山川穂高選手

ではなぜ山川選手は近年まったく打てなくなってしまったのか?いや、24本塁打も打っているため「まったく」という表現は相応しくはないわけだが、しかし4番打者としての働きという意味では「まったく」と言えるのではないだろうか。

そしてその答えは数字を見れば明らかだ。2年連続ホームラン王となった打者を、パ・リーグ5球団が放っておくはずがない。山川選手は相手チームのスコアラーに完全に丸裸にされてしまっている状態なのだ。山川選手を打ち取りやすいパターンがパ・リーグ5球団で確立されてしまっている。

その証拠にセ・リーグ6球団それぞれとの対戦打率で、山川選手の今季の通算打率.232を下回ったのはDeNA戦だけだった。残りセ・リーグ5球団の対戦打率はいずれも通算打率を上回っている。

広島戦.364、中日戦.333、巨人戦.273、ヤクルト戦.250、阪神戦.250、DeNA戦.100

一方パ・リーグ5球団それぞれの対戦打率は、日本ハムと楽天戦以外は今季の通算打率を下回っている。

楽天戦.258、日本ハム戦.245、ソフトバンク戦.222、ロッテ戦.206、オリックス戦.203

楽天戦と日本ハム戦だけは今季の通算打率.232を上回っているとは言え、.258と.245という低水準な数字となっており、自信を持って「上回っている」とは言えない程度の数字だ。

対戦数が少ない場合は、基本的に野球というスポーツは圧倒的に打者よりも投手が有利となる。にも関わらず対戦数の少ないセ・リーグ相手では、5球団の対戦打率が通算打率を上回っている。これはつまり、セ・リーグ各球団がまだ山川選手のウィークポイントを見つけられていないことを意味する。

逆にパ・リーグでは山川選手のウィークポイントが洗い出されていて、投手がデータに沿ってしっかりとボールをコントロールできさえすれば、山川選手を抑えることはもはや難しいことではなくなっているのだ。

一方の柳田悠岐選手は今季の通算打率.300に対し、各球団との対戦打率は以下のようになっている。

西武戦.371、ロッテ戦.356、日本ハム戦.284、楽天戦.272、オリックス戦.267

巨人戦、.273、DeNA戦.273、阪神戦.273、中日戦.250、広島戦.200、ヤクルト戦.091

西武戦では.371という圧倒的な対戦打率を残してはいるのだが、この打率を西武投手陣はそれほど気にする必要はない。なぜなら被本塁打は3本で、打点も9に抑えているからだ。この数値は高く評価できると思う。

柳田選手の場合も、パ・リーグ5球団は徹底的にマークしているはずだ。にも関わらず西武・ロッテ戦ではしっかりとヒットを打ち、他の3球団からもそこそこの打率を残せている。つまり徹底的にマークされているのに、柳田選手はその上を行っているということだ。ここが山川選手との最も大きな違いと言えるだろう。

緩急に翻弄されている山川穂高選手

では山川選手は来季はどうすれば良いのか?一般的には改善法としては長所を伸ばすか、弱点を克服するかという二点に絞られるわけだが、長所を伸ばしたところで相手投手が得意ゾーンに投げてくれる可能性は非常に低い。ということは、弱点を克服しなければ打てるようにはならない、ということだ。

来季も相手チームは徹底的に山川選手のウィークポイントを突いてくるはずだ。すると山川選手が打てるボールは、追い込まれる前の失投ということになる。つまり投手がコントロールミスをして、山川選手の得意ゾーンに投げてしまうというケースだ。

ちなみに追い込まれてしまうと、得意ゾーンに来てもミスショットをしたり、追い込まれている分スウィングが弱くなったりしてヒットになる確率は、追い込まれる前よりも大幅に低下してしまう。全盛期のイチロー選手でさえも、追い込まれたあとの打率は2割台だった。

山川選手はとにかく泳がされることが多い。これは体重移動をして打っている打者の最大の弱点で、緩急に非常に弱いのが特徴だ。つまり山川選手を抑えるためには、遅い変化球を見せてから速いボールを投げるか、速いボールを投げてから遅いボールを投げるかをすればいいのだ。

未だにウェイトシフト(体重移動で飛ばす打ち方)で打っている山川選手はスウィング中の頭の移動が非常に大きいため、バッテリーからすると緩急を使いやすい打者ということになる。

言い方を変えると、豊富な球種で緩急を上手く使ってくる先発タイプの投手よりも、少ない球種で力で押して来ようとするリリーフタイプの方が、山川選手にとっては打ちやすいということになる。

現に山川選手が終盤でホームランを連発した際の相手投手は試合終盤のリリーバーばかりで、先発投手は日本ハムのアーリン投手くらいだったと思う。だがこのアーリン投手は山川選手がホームランを打った試合では4回6失点と大不調だった。

こうして見ていくと来季山川選手が打てるようになるためのポイントは、どれだけ逆方向を意識したバッティングができるのか、ということではないだろうか。プロでもアマチュアでも引っ張るばかりの打ち方では緩急に対応することはできない。

近年の山川選手は「緩急さえつけておけば、打たれてもそれほど大怪我することのない打者」という枠に入れられてしまっている。この相手投手からの見られ方を変えるためには、やはりアーリン投手からホームランを打った時のように、しっかりと逆方向を意識して振り抜くということに尽きるのではないだろうか。

例えばかつての中島裕之選手のように反対方向に引っ張ることができる打者というのは、投手からすると緩急を活かしにくくなるため非常に投げにくい。山川選手もそのような姿を数多く見せて相手投手の頭にその残像を残せるようになれば、相手投手も緩い変化球を投げにくくなり、緩急ではなくコースで勝負しようとする場面が増えてくる。

すると山川選手からすればコースさえ絞ってしまえば緩急によってスウィングを崩されることが少なくなり、打率.280前後で30〜35本塁打程度の数字は残していけるのではないだろうか。

だがそれでも残念ながら柳田選手の数字を上回ることはまだできない。しかしいつかは、柳田選手の力が衰える前に、山川選手には是が非でも柳田選手の数字をすべて上回って欲しい、というのが筆者のみならず西武ファンの総意だと思う。

山川穂高選手はなぜ打てないのか?

少しビッグマウスが過ぎるように思う山川穂高選手

松井稼頭央ヘッドコーチは山川穂高選手に対し、2022年は4番を打つつもりで準備をするようにと伝えた。これは至極当然とも言えるヘッドコーチの言葉だと思う。やはり山川選手が打ってくれないようではチームとしては困ってしまう。

だが山川選手は打率を残せるバッターではない。山川選手本人は、来季は12球団ナンバー1の4番打者になって下がった分の年俸を取り返すと公言したが、「将来的には三冠王」という言葉を使って以来、山川選手はややビッグマウスが過ぎるように筆者には感じられるのだが、読者の皆さんはいかがだろうか。

もちろんホームラン王や三冠王を目指すことは素晴らしいことであり、その高みを目指してこそのプロ野球選手だとは思う。だが山川選手の言葉には、あまり強い現実味を覚えることができないのだ。三冠王にしても、12球団ナンバー1の4番にしても、現状の山川選手の成績で簡単に口にして良い重さの言葉ではないと思う。

これが柳田悠岐選手のように、打率もホームラン数もリーグトップレベルなのであれば、三冠王を目指すと公言してもファンとして「不可能ではない」と夢を抱ける。だが今の山川選手が柳田選手や吉田正尚選手を上回れるとは思えない。「12球団ナンバー1の4番」という言葉を使って良いのは、やはり一年間4番を打ち続けた打者なのではないだろうか。

もちろん筆者だって山川選手には12球団ナンバー1の4番打者になってもらいたい。だが野球の動作改善の専門家である筆者にもし言わせてもらえるのならば、山川選手は来季も12球団ナンバー1の4番打者になることはできないだろう。

今季吉田正尚選手の得点圏打率は.400、柳田悠岐選手は今季は.298と数字を落としたが、昨季の得点圏打率は.369で、2018年には.389という得点圏打率もマークしている。一方山川選手の今季の得点圏打率は.172、2020年は.287、2019年は.261と、チャンスで精彩を欠くシーズンが3年も続いている。

山川選手は柳田選手や吉田選手を上回ることを考えるのではなく、まずは中村剛也選手を上回ることだけに集中すべきではないだろうか。柳田選手や吉田選手を越えようと思うのは、ライオンズの4番に定着した後でも遅くはない。

なぜ山川穂高選手は打てないのか?

山川選手はホームラン王になったあと、打率を上げるためにポイントを体の近くに持っていこうとした。これは柳田選手や吉田選手が実践しているステイバックという技術の一環になるわけだが、山川選手はここで大きな間違いを犯しているのだ。

ステイバックとは体重移動はせず、軸脚に体重を乗せ切って体全体で直角三角形を描きながら打つ技術で、その結果ポイントが体の近くに来るようになり、強烈なスウィング速度を維持しつつも、バッティングの正確性を飛躍的に向上させられるようになる。ちなみにステイバックの詳細については筆者が監修しているオンデマンド野球塾のバッティングコーナーにある「ステイバック特集ページ」で、詳しく解説しているので、もしご興味があればご覧になってみてください。

ポイントを体に近付けるのはステイバック特有の打ち方なのだが、山川選手は体重移動をしたままポイントを体に近付けようとしていたのだ。これがそもそもの間違いの始まりだった。

山川選手の打撃フォームにはとにかく無駄な動作が多い。例えば左足の上げ方だけを見ても、左膝を大きく曲げて、サッカーボールを蹴るような動作を入れている。これだけ左脚を大きく動かしていけば、体重を軸脚に乗せ続けようとしてもそれは難しく、その結果ステイバックで打つこともできなくなり、その状態でポイントを体に近付けようとしてもただ差し込まれるだけになってしまう。

山川選手のフォームをよく観察していただきたいのだが、頭が上下前後と色々な方向に動いているのだ。これは体重移動をしていて、フォームに無駄な動作が多い打者の大きな特徴だ。そしてこれだけ頭を大きく動かしては、打てるものも打てなくなってしまう。

今季終盤、山川選手はポイントを投手寄りに戻すことによって少し復調したようだが、これは当然の結果だろう。体重移動をしている限り、ポイントを近付けようとしてもバイオメカニクス的にはチグハグなフォームになってしまう。体重移動をするのなら、ポイントは投手寄りに置かなければ野球動作の科学的には筋が通らないのだ。

現代野球では体重移動をするウェイトシフトでは何年も続けて好成績を残し続けることはできない。毎年のようにタイトル争いに加わっている打者のほとんどが、今は皆ステイバックで打っている。

例えばジャイアンツの坂本勇人選手も駆け出しの頃はウェイトシフトだったのだが、当時の打撃コーチにウェイトシフトを教え込まれた後は、長打力を維持しつつも毎年のように安定した高打率を残せるようになった。熊澤とおるコーチの指導を受けていた浅村栄斗選手も同様だ。

つまり山川選手が12球団ナンバー1の4番打者になるためには、ムーヴィングファストボールやカッターが主流の現代野球においては、ステイバックの習得が不可欠ということになるのだ。だが山川選手はステイバックではなく、今なおポイントを前に置くウェイトシフト(体重移動をする打ち方)で打とうとしている。これでは山川選手が柳田選手や吉田選手を上回れることは、少なくとも来年に関しては可能性は低いだろう。

確かに今季の終盤では調子が良さそうにホームランを打っていたが、しかし調子が悪くなった時にも打てるかどうかが4番打者に問われる資質だ。動作改善の専門家である筆者の意見としては、山川選手は調子が良ければ打てるだろうが、調子が少しでも落ちればパタっと打てなくなりそうだ、というのが正直なところだ。

いや、もちろん打ってもらいたいのだ。山川選手には誰よりも打ってもらいたいのだが、専門家として冷静に見ていくと、悲しいかなこのような意見になってしまうのである。

中村剛也選手、栗山巧選手に技術を叩き込んだ名コーチとは?!

筆者が思うに、山川選手の最大の弱点はその器用さではないだろうか。器用さゆえに手先で上手くバットを扱うことができてしまう。そのためタイミングも下半身で取る形にはなっておらず、グリップを軽く揺らす動作でタイミングを計っているように見える。

この動作は中村剛也選手と類似していると思われた西武ファンの方もいるかもしれない。確かにグリップの動きだけを見れば中村選手と山川選手はよく似ている。だが決定的に違うのは、中村選手は実際には左足でタイミングを計っているという点だ。いや、もっと正確に言うならば、左足でタイミングを計りながら、グリップを揺らすことによって上半身のタイミングを下半身に合わせに行っているのだ。

山川選手は、中村選手のフォームを参考にしてきただけありフォームが中村選手によく似ている。だがメカニクスやモーションといった細かいところを見ていくと、実は山川選手のフォームと中村選手のフォームはまったくの別物なのだ。ちなみに筆者は雑誌で、デーブ大久保コーチに並んで中村剛也選手のバッティングメカニクスを徹底解説させてもらったことがあるのだが、中村選手は本当に理に適った打ち方をしているのだ。

なお中村剛也選手はデーブ大久保コーチの指導によって開花したと思われがちだが、実際中村選手(と栗山巧選手)に細かい動作指導をされていたのは熊澤とおるコーチだ。これに関しては以前、デーブ大久保コーチがそう仰っていた。

熊澤とおるコーチは、筆者がプロコーチとして尊敬している数少ないコーチの一人で、卓越された打撃理論は松井稼頭央選手も信頼し、MLB時代は熊澤コーチが松井選手のパーソナルコーチを務めていた。また、石井貴投手も肩を痛めると、理論派の熊澤コーチに助言を求めたと言う。そんな名コーチである熊澤コーチが、筆者が監修する『よくわかる!投球障害予防改善法-徹底解説ビデオ』を推薦してくださっているのだから、本当に感謝の思いしかない!

さて、改めて山川選手に話を戻すと、やはり山川選手に今必要なのはパーソナルコーチだと思うのだ。客観的かつ理論的に山川選手のフォームを見てくれるパーソナルコーチの存在があれば、こうも長く不振が続くこともなかったはずだ。Going My Wayで突き進むのも悪いことではないが、しかし不振が続いている以上、そろそろパーソナルコーチの力を借りるべき時だとは言えないだろうか。

山川選手の得点圏打率が.300を超えたのは78試合しか出場していない駆け出しだった頃の2017年(.353)と、初めてホームラン王となった翌2018年(.310)のみだ。その他のシーズンの得点圏打率はどれも4番打者に相応しい数字ではなかった。

とにかく山川選手が12球団ナンバー1の4番打者になるための技術的な課題は山積み状態だ。とてもじゃないが、3〜4ヵ月後の開幕戦にそれらすべてが克服されていると思えない。だから来年慌てて12球団ナンバー1の4番打者になろうとして、また力み不振を続けてしまうくらいならば、まずはリラックスしてライオンズの4番打者としての定着を目指すべきだと思う。

果たして山川選手の姿はライオンズの4番打者として相応しい姿なのだろうか?!

さて、最後になったが、筆者は山川選手の契約更改後の会見に違和感を抱いた。もしそう感じたのが筆者だけならば大変申し訳ないのだが、会見に、色は薄めとは言えサングラス(色入り眼鏡?)をかけて臨むのは果たしてありなのだろうか。屋外で太陽が眩しいのなら話は別だが、契約更改後の室内での会見でサングラスを外さないことに、筆者は違和感を覚えてしまった。

もちろんそれを格好良いと思うファンの方も多いのだろうから、これが悪いことだと言うことは筆者にはできない。しかしこの姿をメディアを通して様々な形でファンの元に届けられる。せめてネクタイくらいはもっとしっかりとした形で絞めてもよかったのではないだろうか。

筆者個人としてはややだらしなく感じてしまい、4番打者としての威厳を山川選手から感じることができなかった。もちろんファッションは人それぞれであるのだが、山川選手はもう少し子どものファンも見ているということを意識した装いも必要な気もする。

12球団で最もちびっこファンの多いライオンズの主砲なのだから、親御さんや教師が「山川選手を見習いなさい」と言われるような姿こそが、ライオンズの4番打者としての相応しい在り方ではないかと、筆者は個人的にはそんなふうに考えてしまったのである。

山川穂高

チャンスではまったく打てていない山川穂高選手

松井稼頭央ヘッドコーチは、山川穂高選手に対し、来季も4番打者としてしっかり準備をするようにと指示を出したようだ。もちろん復調してもらわなければならない山川選手に対しては、ごく自然な指令だったと思う。

だがチームを優勝に導くための戦術をヘッドコーチとして辻発彦監督に提案していくためには、「4番山川」以外のオプションもしっかりと準備しているはずだ。もちろんそこは外国人選手に頼ることにもなると思うのだが、現時点ではブライアン・オグレディ選手と、テーラー・ジョーンズ選手の獲得調査が進められているようだ。

さて、山川選手だが来季は前でボールを捌く打ち方に戻すようだ。今季の終盤はその打ち方に戻して3試合連続ホームランをマークし、復調の気配を見せていた。だがこの3本はいずれもソロホームランだった。もちろん打線の巡り合わせもあるわけだが、山川選手は得点圏で打っているホームランが多くはない。2021年今季の得点圏打率は.172で、得点圏で打っているホームランは全24本中7本(29%)という数字にとどまっている。

一方中村剛也選手の2021年の得点圏打率は.317で、得点圏で打ったホームランは全18本中7本(39%)となっている。

筆者が気になるのは、山川選手がホームラン数にこだわっているように見える点だ。もちろんホームランを打てるというのは非常に大きな魅力であるわけだが、4番打者に求められるのはホームラン数以上に、回ってきたチャンスでどれだけ走者を生還させられるかという点だ。

例えば黄金時代の4番打者だった清原和博選手はホームラン王になった経験はないが、チームを優勝に導く勝負強いバッティングを見せ続けてくれた。もし清原選手がホームラン王という称号にこだわりを見せていたら、ライオンズの黄金時代はあそこまで輝かしいものにはなっていなかっただろう。

そして清原和博選手が4番としての仕事に徹してくれたため、3番秋山幸二選手と5番デストラーデ選手が伸び伸びと打てる状況にあった。この二人のタイトルは、清原和博選手のサポートあってこそだったと言えるだろう。

チャンスで、清原選手が体を左打席側に傾けながら反対方向に打つ姿は、未だ筆者の脳裏に色濃く残っている。やはり4番打者というのは、自分を犠牲にしてでもチームを勝利に導くバッティングができることが重要ではないだろうか。

個人成績を優先しているように見える今の山川穂高選手

話を山川選手のフォームに戻すと、この1〜2年の山川選手はポイントを体の近くに置いて打っていた。いわゆるステイバック打法になるわけだが、しかし山川選手はこれが上手くいかなかった。

その理由は単純だ。ステイバックというのは軸足に体重を乗せて、軸の鋭い回転で体の近くで強烈にバットを振っていく打ち方なのだが、山川選手は体重移動をしながらポイントを体の近くに置いていた。つまり技術的にチグハグだったのだ。

このチグハグさに関しては、野球動作を科学的に学んでいる筆者のようなプロコーチや専門家であればすぐに気がつくところだと思う。そしてこの動作によりスウィング中の頭も大きく移動してしまい、目線もブレることによってミート力も低下していた。その結果泳ぐようなスウィングを幾度となく見せていた。

体重移動をするウェイトシフト打法でポイントを前に置くと、当たれば飛ぶがなかなか当たらない、という打者になりやすい。つまりホームランを打てても打率は残せないというタイプだ。しかし果たして4番打者がこれで良いのだろうか。

昭和であれば打率.270で30本塁打打てれば凄いと賞賛された。だが現代野球では打率.330で30〜40本打てる打者が何人もいる。山川選手はこの秋、12球団で一番の4番打者になると公言しているが、そうなるためには打率.330程度でホームラン王争いに加わる必要がある。

だが筆者は個人的にはこの考え方は好きではない。野球はチームスポーツであるため、まずは優勝するために自分が求められていることを優先し、個人成績は二の次にすべきだ。日本一になった結果、タイトルも獲れたというのがベストだ。

山川選手が打てば優勝できる、と言うこともできるが、しかし山川選手がホームラン王になった2年はリーグ優勝はできたが、日本シリーズに進出することはできなかった。ライオンズの使命はリーグ優勝ではなく、日本一であるはずだ。

現状の山川選手の考え方を踏まえ、復調したと前提しても、山川選手には6番あたりを打ってもらうのがチームのためではないだろうか。左右の外国人打者が上手く機能すれば、3番森友哉捕手(左)、4番ジョーンズ選手(右)、5番オグレディ選手(左)、6番山川選手(右)というジグザグオーダーを組むことができる。すると相手チームも継投策を取りにくくなる。

やはり山川選手には4番の座を与えるのではなく、4番の座を奪わせるようにした方が良いと筆者には思える。そして山川選手が4番の座を奪取するために必要なのはホームラン数ではなく、やはり低すぎる.172という得点圏打率を何とかすることだろう。チャンスに打てないのでは4番打者としては失格だ。

山川選手にはライオンズの主砲として、やはり12球団ナンバー1の4番打者になってもらいたい。かつて同じ背番号を背負った清原和博選手や、4番ではなかったものの中島宏之選手や浅村栄斗選手のように、チャンスで打てるバッターになってもらいたい。

4番打者の役割は、とにかく走者を生還させることだ。チャンスならば反対方向を意識して確実に走者を生還させ、走者がいなければ一発で得点が入るホームランを狙っていけば良いと思う。このような打者になれた時こそが、山川選手が12球団ナンバー1の4番打者として、他11人の4番打者に賞賛される時ではないだろうか。

ブライアン・オグレディ

筆者はまだあまり魅力を感じていないオグレディ選手

ライオンズでは今季所属した5人の外国人選手すべての契約を終了することになった。外国人選手の総入れ替えはリスクがやや高いと言えるのだが、しかし彼らの数字を見るとそれも当然かなということになるのだろう。

現在報道では、パドレスからFAになっているブライアン・オグレディ選手の調査を行なっていると伝えられている。だが筆者個人としては、この選手を獲得する高い必要性はあまり感じていない。必要性があるとすれば、外野と一塁の複数を守れるという点だろうか。

一応メジャーでプレーしている経験はあるが、メジャーでの実績はほとんどないに等しい。だがこれはそれほど問題ではないと思う。メジャー経験がなくても、日本のプロ野球で上手くハマる選手は大勢いる。

オグレディ選手に対し筆者が最も注目したいのは得点圏打率だ。今季は主にマイナーリーグのエルパソでプレーをしたのだが、マイナーでの打率.281に対し、得点圏打率が.264となっている。マイナーリーグでこの程度の数字しか挙げていない選手を獲得する意味はあるのだろうか。

これが仮に打率.281で、得点圏打率が.350であったなら話は変わってくる。しかし今季山川穂高選手の得点圏打率が.172とチャンスではまったく打てていない状況で、マイナーでの得点圏打率.264のオグレディ選手を獲得しても、弱体化した打線を強化することは難しいのではないだろうか。

そしてオグレディ選手は左打ちなのだが、3番を打つ森友哉捕手が左打ちということを考えると、オグレディ選手を4番に入れることはできれば避けたい。3・4番を共に左打ちにしてしまうと、相手チームが左打者殺しの投手を投入しやすくなるためだ。

ただしオグレディ選手は、マイナーリーグでは左投手相手に.317という打率を残しており、対右の.270と比べても、左投手を得意としているようだ。

山川選手の起爆剤になれる外国人打者の存在が必要

オグレディ選手は右膝を曲げ、上半身を突っ込ませて打つことがやや多い。この癖がある外国人選手は、日本の変化球に苦労することが多く、あまり良い打率は残せないのではないだろうか、というのが筆者の個人的意見だ。

オグレディ選手に関してはまだ調査中という段階であるため、実際に獲得となるのかはまだ分からない。だがここで具体的に名前が挙がるということは、獲得に至る可能性は高いのだろう。

内外野を守れて、そこそこ走れる左打ちという意味では、スパンジェンバーグ選手とタイプは似ている。同じタイプの選手をこうして探してくるということは、このタイプの選手がもしかしたら辻発彦監督が求めている外国人選手像なのかもしれない。

だがやはり筆者は「4番山川」ありきで考えるのではなく、4番を打てる右の大砲を獲得すべきだと思う。そして得点力の向上を目指すのであれば、やはり打率よりも得点圏打率の方が高い選手をピックアップすべきだ。

例えば2021年の中村剛也選手の打率は.284だったが、得点圏打率は.317だった。ライオンズはこういう数字のバランスを持った外国人打者を獲得すべきではないだろうか。ユーティリティ性前提では、また中途半端な成績しか残せない外国人打者を招いてしまうことになる。

これもあくまでも筆者の個人的な意見であるわけだが、一塁やDH専任であってもまずは打てる外国人選手を探すべきだろう。その結果山川選手を三塁中村選手のバックアップに回すことになったとしても。

本塁打王を2回獲得したのはもう過去の話だ。そして2回目の本塁打王を獲得した時も山川選手の打率は低空飛行で、近年は当たれば飛ぶが、なかなか当たらないというバッティングが続いてしまっている。この山川選手を発奮させるためにも、起爆剤にするためにも、山川選手のポジションにぶつけるような外国人選手を獲得すべきだと筆者は考えている。

ライオンズ打線はやはり山川選手の復調なくして考えることはできない。だが今までのように「4番山川」前提で考えてしまうと、また同じ失敗を繰り返してしまうのではないだろうか。それならば山川選手は6〜7番前提でスタートさせ、そこから実力で4番を再奪取させるというやり方の方が、山川選手自身にとってもプラスになるように思える。

こうして考えていくと、やはりオグレディ選手では役不足のように感じられるのだ。もちろん日本に来てみたら大変貌を遂げるという可能性もあるわけだが、そのような選手は稀だ。

ライオンズの例年の傾向では、外国人選手の獲得時期は比較的遅い。そのためまだ確定には至らないと思うのだが、どんな選手を獲得するにしても、少なくとも現状のライオンズを踏まえれば外国人打者にそれほどユーティリティ性を求める必要はない、というのが筆者個人の意見なのだが、読者の皆さんはどうお考えだろうか。

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2年連続で下半身を怪我してしまった山川穂高選手

2021年3月30日のファイターズ戦、山川穂高選手は初回にツーランホームランを放ってみせた。しかし一塁ベースを踏んだ辺りで急に崩れ落ちるように走るのを止めてしまった。左太腿裏に激痛が走ったらしい。試合中はアイシングをするだけで病院には行かずに様子を見たようだが、しかしその後診断を受けると肉離れであることが判明した。

筆者は渡部健人選手に対し「怪我を防ぐためにも減量は必要」だとこの場で何度か書いてきたが、しかし山川選手は渡部選手に対し「減量は必要ない」と言い切っていた。その山川選手が開幕早々に下半身を怪我してしまったのだから、山川選手の言葉には説得力がなくなってしまう。

4番打者というのは、チームを勝利に導くことができる一打を放ち、そして4番打者として試合に出続けなければならない。4番として試合に出続けられていない時点で、もうすでに真の4番打者として呼ぶことはできなくなってしまう。そういう意味では山川選手は2年連続で下半身を怪我して戦列を離れてしまい、真の4番打者と呼ぶには難しい状態となっている。

清原和博選手は真の4番打者だった

西武ライオンズの真の4番打者として筆者が真っ先に名前を挙げたいのは、やはり清原和博選手だ。ライオンズ時代の清原選手はとにかく試合に出続けた。ライオンズに在籍していた11年間は、右肩を脱臼してしまった1995年以外はほとんどフル出場に近い状態で試合に出続けた。そして実際に全試合出場を果たしているシーズンも3回ある。

残念ながらライオンズを移籍してしまったのちは増量により膝を痛めることが多くなり、100試合出場にも満たないシーズンばかりとなってしまうのだが、しかし増量する前のライオンズ時代はとにかく試合に出続け、チャンスで打ち続けた真の4番打者と呼べるスラッガーだった。

山川選手はその清原選手の背番号を受け継いでいるのだ。それならば清原選手を上回るような選手になっていかなければならない。過去の記録というのは栄光としてではなく、次世代の選手たちが上回るために残されている。清原選手が525本塁打を打ったのならば、山川選手には526本塁打打って欲しい。だがここまで下半身を頻繁に怪我してしまう状況が続くと、その記録に対する期待も薄らいでしまう。

山川選手が抜けても打線は機能する!

報道を読む限りでは最短の10日で戻って来られる可能性もあるようだが、しかしシーズンの序盤ということもあり、辻発彦監督も無理をさせることはしないだろう。メヒア選手スパンジェンバーグ選手が来日して試合に出場できるようになるまでは、若手選手の奮闘により乗り切るより他ない。

ただ、ライオンズの場合はこれまでもダブルクリーンナップとも呼べる打線を組んできたため、山川選手が抜けても打線が機能しなくなるほど手薄になることはない。例えば先日は好調の源田壮亮主将が3番に座るオーダーを組んだが、この3番あたりに佐藤龍世選手やブランドン選手が入って来られれば良いのではないだろうか。

相手チームからすればホームランがほとんど出ない源田選手が3番にいるよりも、長打力のあるブランドン選手が3番にいた方が投げにくくなると思う。また、木村文紀選手を一時的にクリーンナップに据えるというオーダーも魅力的だと思う。

体重が減ってもホームランは打てる!

最も優れた野球選手は、怪我をせずに試合に出続けられる選手だと筆者は考えている。だからこそ仕事で選手たちをコーチングする際も、筆者は常に怪我をしないフォーム・体づくりを徹底させている。だが山川選手の場合は、2年連続で言葉だけが一人歩きしてしまっている。昨季は三冠王という言葉を使い、今季はどんなに悪くても40本塁打以上と言い切っている。だが結果的には2年連続で下半身を怪我してしまい、チームにダメージを与えてしまった。

中村剛也選手も比較的下半身の怪我が多い選手だ。体重の比率と下半身の怪我を短絡的に結びつけることはできないが、しかし増量を行った選手や体重の比率が高い選手が下半身を怪我するケースは間違いなく多い。そういう意味でも筆者は山川選手の「(渡部選手は)減量する必要はない」という言葉に対しては否定的立場だ。

ちなみに渡部選手のキャンプイン前の体重は身長176cmに対し118kgだった。118kgと言えば、身長198cmのメヒア選手と同じ体重だ。身長はメヒア選手の方が22cm高いのに体重は同じ。この数字を見るだけでも、渡部選手の体重がどれほどであるかがよく分かる。それでも山川選手は減量の必要はないと言い切る。

山川選手は体重が減ればホームランも減ると語っているが、確かにそういう理屈もある。ウェイトシフトで打っている場合はそういうことも起こるだろう。だがステイバックという技術さえ身につけられれば、体重に関係なくホームランを量産することができる。ちなみに昨季のホームラン王である浅村栄斗選手の体重は身長182cmに対し90kgだ。山川選手や中村選手よりも長身であるにもかかわらず10kg以上軽いのだが、ホームラン王を獲得している。この浅村選手は、ライオンズ時代に個人コーチである熊澤コーチ(筆者が尊敬するパーソナルコーチ)の指導もと、ステイバックを身につけた選手だ。そしてステイバックを身につけた途端、浅村選手の駄棒は一気に花開いていった。また、まだ若手だった中村剛也選手に技術を叩き込んだのもライオンズで打撃コーチを務めていた頃の熊澤コーチだった。

2年連続で下半身を怪我してしまった事実と体重との因果関係を、山川選手自身が今後どう捉えていくのかは分からない。あくまでも無関係であるという姿勢を貫くのか、それともこの事実を受け止めて体づくりを見直すのか。だが山川選手が本当に真の4番打者へと進化していきたいのならば、いずれにせよ怪我をしない選手になっていく必要がある。これは年間ホームラン数よりもずっと重要な要素だ。

とにかく山川選手には最短の10日間で完治させ戦列に復帰し、ホームランを量産する元気な姿をまた見せて欲しいというのが筆者だけではなく、ファンの総意だと思う。この怪我が長引かないことを祈りながら、しばらくの間は若獅子たちが躍動する姿を一ファンとして見守っていきたい。

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
西武 0 0 0 1 0 4 0 0 1 6 9 1
阪神 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 7 1

【継投】
浜屋将太〜平良海馬〜増田達至〜佐野泰雄〜宮川哲

【本塁打】
山川穂高(2号)

前回から改善を見せ、良い経験も詰めた浜屋-柘植バッテリー

この試合先発マウンドに登ったのは、前回は自分の持ち味を活かすことができず辻発彦監督からも厳しいコメントを出されていた浜屋将太投手だった。球威があるわけではない浜屋投手の場合、生命線になるのはコントロールと配球だ。前回の登板ではそれが共に上手くいかなかったわけだが、今日のマウンドではそこそこ改善を見せることができたのではないだろうか。

結果的には5回を投げて2失点だったわけで、これは先発ローテーションの5〜6枚目を目指している浜屋投手のレベルなら及第点と言える結果だったと思う。もちろん本音はもっと上を目指して欲しいわけだが、これまでの実績を踏まえるならば、西口文也投手コーチも十分及第点を与えることができたのではないだろうか。

しかし5回に打たれたソロホームラン2本は余分だった。近本選手には外角を見せた後の内角を完全に狙われてしまい、思い切り引っ張られてライトスタンドに運ばれてしまった。左対左だったことを考えれば、もう少し厳しく行っても良いのではないかとも思ったが、カウントが2−1だったこともあり、3-1にしたくないという気持ちがボールを僅かに甘くしてしまったのかもしれない。カウントを不利にした時のストライクの取り方は、今後も浜屋投手の課題になりそうだ。

マルテ選手に打たれたホームランも同じだと言える。3ボールからストライクを取りに行った外角高めの甘いストレートを左中間の深いところまで運ばれてしまった。すでに二死まで行っていて走者もいなかったのだから、ここはレギュラーシーズンを想定するならば四球を出しても良い場面だったとも思える。チームが直後に逆転してくれたため大怪我にはならなかったが、このマルテ選手のホームランで2-1と逆転されてしまったことを考えるならば、四球覚悟でもっと攻めに行き、四球を出したら出したで次の大山選手との勝負を選んでも良かったように見えた。

だがこのような駆け引きに関しては、まだまだ若い浜屋投手はこれから経験を積み身につけていくことなのだろう。バッテリーを組んでいたのも経験値がまだ高くはない柘植世那捕手だったため、このマルテ選手に打たれたホームランに関しては、浜屋投手にとっても柘植捕手にとってもシーズンへと繋がる良い経験になったと思う。

グランドスラムで4番の大仕事を果たした山川穂高選手

打つ方では足首の怪我も完治し、ようやく4番という指定席に戻ってきた山川穂高選手が大仕事をやってのけた。山川選手が真の4番打者になるためには得点圏打率を上げることが重要であると筆者はこれまで書いてきたわけだが、この試合ではリードを許していた一死満塁という大チャンスで、見事なホームランをレフトスタンドへと放り込んだ。

この満塁ホームランでライオンズは2-5とリードを取り戻したわけだが、タイガースバッテリーの攻め方は、明らかにダブルプレーを欲しがっているというものだった。初球から、ホームランを打たれた3球目まで、山川選手の内角をえぐるツーシームを連投してきた。

もし山川選手が初球を振りに行っていたら、もしかしたらバッテリーの術中にはまっていたかもしれない。だが3球同じ球を見せられて山川選手が黙っているわけがない。2球目よりも僅かに甘く入った138kmのツーシームを、レフトスタンドへと放り込んだ。この3球は決して甘いボールがあったわけではないのだが、やはり3球同じ球を続ければ山川選手のレベルであれば簡単に打ち返すことができる。打った山川選手は見事だったわけだが、しかし見え見えの配球を相手チームの主砲に見せたタイガースバッテリーの配球ミスだったとも見えた場面だった。

ちなみに山川選手は満塁ホームランを打った次の打席では、外角の決して甘くはないフォークボールを上手く捌いてセンター前ヒットを打っている。このセンター前ヒットも非常に評価できるのではないだろうか。ホームランを打った直後に、またホームランを狙いに行ってフォームを崩す選手も多い中、ホームランを打っても決して浮かれることなく冷静に、ボールに逆らわない良いバッティングを見せてくれた。

このセンター前ヒットを打った時点で山川選手は打率を2割台から一気に.310まで上げてきたわけだが、このような冷静なバッティングは、まさに4番の姿だったと言える。シーズンに入ってからもこのような冷静なバッティングを見せてくれれば、山川選手自身が将来的に意識している三冠王という称号にも、また少し近づけるのではないだろうか。

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「おかわり三世」と呼び声高いルーキー渡部健人選手だが、筆者の目にはすぐに1軍で活躍できる技術はまだないように映っている。バッティングフォームを見ていると山川穂高選手同様に手先が器用そうだなという印象を受ける。だが気になる点は、下半身よりも先に上半身が動き終えてしまうフォームだ。

筆者は仕事柄プロ野球選手のフォーム映像を細かく分析していくことも多いのだが、時々仕事の合間を縫って渡部選手やタイシンガー・ブランドン大河選手の映像を見ることもある。

ブランド選手は平良海馬投手からヒット性の当たりを打ったようだが、やはり1軍で結果を残すレベルにはまだ至っていない。まずスウィングがまだ荒く、軸のスタビリティも低く、ウェイトシフトで打っていることにより頭の位置を大きく移動させながらのスウィングになっていて、これでは1軍のボールを正確にミートしていくことはできないだろう。

渡部選手にしても合同自主トレからの疲れもあるのかもしれないが、フリーバッティングでも完全に手で打ちに行っているように見えた。フリーバッティングの相手は本田圭佑投手だったが、フリーバッティングという打ちやすいボールを投げてくれる練習にも関わらず、1本もホームランを打つことはできなかった。

サードに穴が見え始めている今年のライオンズ

現在ブランドン選手はA班、渡部選手はB班でキャンプを過ごしているわけだが、ふたりとも今年いきなり1軍でブレイクする可能性は高くはないだろう。だがここから打撃コーチの指導のもと、プロで通用する確かな技術を身につけていけば、近い将来このふたりが山賊打線の一員になっている可能性もある。

ライオンズの主軸打者では、中村剛也選手が近年故障しがちだ。今年もキャンプイン早々ふくらはぎに違和感を覚え別メニューになっている。つまりライオンズとしては中村選手の後釜になる三塁手を急ピッチで育てなければならない時期に来ているということだ。

今季に関しては中村選手の代わりにサードに入るのはスパンジェンバーグ選手が多くなるのだろう。だが後々は山川選手がサードに回っても良いと思うし、渡部選手やブランドン選手もそこに食い込んでいかなければならない。

故障が増えてきた中村選手を見て、若手選手はこれをチャンスだと思わなければならない。もちろん今年いきなり渡部選手とブランド選手が1軍のサードでレギュラーを張ることはないだろうが、山川選手に関してはサードに挑戦しても良いように思える。

山川選手がサードに回れば、メヒア選手をファーストで起用することができ、オーダーのバリエーションを増やすこともできる。メヒア選手は基本的にはファーストしか守れないため、山川選手がファーストに入ってしまうと、DHが空いていなければメヒア選手は代打要員ということになってしまう。

本塁打王になったことがあり、体もまだまだ動くメヒア選手を代打要員として置いておくのはもったいない。DHには基本的には栗山巧選手が入るため、やはりメヒア選手をもう一度輝かせるためにも、山川選手がサードを守るというオプションもあって良いと思う。

今後熾烈を極めるであろうライオンズの正三塁手争い

とにかく、中村剛也選手が今後1年間フルで試合に出続けることは難しくなる。本音を言えばもう一度2019年のような活躍を見せて欲しいわけだが、しかし年々怪我が増えていることと年齢を考えれば、休ませながらの起用になっていくことは間違いないだろう。

そうなった時、やはりサードをスパンジェンバーグ選手だけに任せてしまうのは少し怖い気もする。外国人選手の場合、活躍しても長年日本でプレーし続けてくれる選手もいれば、日本での活躍をきっかけにメジャー復帰を希望する選手もいる。

スパンジェンバーグ選手は今のところはライオンズ愛を見せてくれているが、しかしもし今季3割30本打つようなことがあれば、メジャーのスカウトマンたちがそれを見過ごすことはしないだろう。

将来的なそのような状況も見据えながら、ライオンズは今新たな三塁手を急ピッチで育てなければならない時期に差し掛かってきている。そしてその候補として今、ブランドン選手がA班でアピールを続けている。

現時点では渡部選手はブランドン選手に大きく遅れをとっているわけだが、ふたりとも焦る必要はない。焦って怪我をしても仕方がないのだから、今は焦らずじっくりプロレベルの体づくりをし、プロレベルの技術を身につけていけば良いと思う。

ふたりとも大卒ルーキーであるため、理想としてはもちろん一年目に1軍デビューを果たし、そこからきっかけを掴んでいってくれれば良いと思うのだが、しかし中村剛也選手だってそう簡単に三塁を明け渡す気はないだろう。

こうしてサードに絞って今年のライオンズを見ているだけでも、渡辺久信GMの補強策は本当に理に適っていて、的確なチーム強化をされているなぁという印象を受ける。

ブランドン選手と渡部選手が加入したことにより、中村選手も大ベテランとして最後の一花をしっかりと咲かせていかなければレギュラーとしてプレーすることはできない。そのような状況を作った渡辺GMの手腕は、本当に流石だなと筆者は頷くばかりなのであった。

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得点圏打率があまりにも低かった山川穂高選手

シーズン終了を間近に控え、山川穂高選手が右足首痛の治療に専念するため登録を抹消された。これで3年連続ホームランキングという夢は完全に潰えてしまったわけだが、しかしなぜ山川選手は今季、ここまでの低成績に苦しむことになったのだろうか。確かに24本塁打という数字だけを見れば、決して悪い成績ではないとも言えるわけだが、しかし得点圏打率は.287で、打率も.205と、4番打者としてはあまりにも物足りない数字となってしまった。

筆者個人としては、山川選手はまだまだ真の4番打者ではないと思っている。やはり真の4番打者に必要なのは得点圏打率の高さだ。例えば昨季、2019年の中村剛也選手の得点圏打率は驚異的とも言える.350という数字で、特に満塁には滅法強かった。そして今季終盤になり4番を打つことが増えた栗山巧選手の得点圏打率は.333。ホームランこそ期待することはできないが、チャンスに強いという意味では栗山選手も立派に4番の役割を果たしている。

今季に関しては、山川選手はシーズン途中から右足首を痛めていたようだが、それも成績に大きな影を落としてしまったのだろう。だがシーズン終了10日前というタイミングでの登録抹消は、もう少し早くても良かったような気もする。早く治して、早く復帰して、最終戦にグラウンドに立てていた方が、山川選手自身の気持ちも違っていたような気もする。だが仮にも4番を打っていた打者を、そう簡単に登録抹消にすることはできないという事情もよく理解することができる。

スカウトマンの精密なデータ分析が山川選手を抑え込んだ

今季は「三冠王打法」に取り組み、今季とは言わないが、将来的には三冠王を目指すためのマイナーチェンジに山川選手は取り組んでいた。これはどんなに成績が下降しても変えないと言い切っていたわけだが、しかし山川選手の成績が向上することは、今季に関しては最後まで見ることはできなかった。しかし筆者は、このマイナーチェンジが成績下降を招いたとは思わない。これは森友哉選手にも同じことが言えるわけだが、ホームランキング、リーディングヒッターのふたりを、他球団がノーマークにするはずはないのだ。

近年のスコアラーのスカウティング能力は、10年前とは比べられないほど精密になっている。もちろんそこにはトラックマンなどのハイテク機器の存在も大きかったわけだが、そのような機器を使いながら、本当に精密なスカウティングリポートを作り上げている。つまりピッチャーに、狙ったところに投げ切る技術さえあれば、ホームランキングもリーディングヒッターもしっかりと抑えることができる、ということになる。

山川選手が今季取り組むべきことは、バッティングフォームのマイナーチェンジではなかったと思う。もちろんそれが必要なかった、というわけではない。しかしそれ以上に必要だったのは、自分自身のデータ分析だったと思う。山川選手自身当然そのようなデータ分析は十分にしたとは思う。だがその分析内容が敵と比べ十分ではなかったから、相手投手にしっかりと抑え込まれてしまった、というのが現実だと言えるのではないだろうか。

ホークス戦はチャンスに強かった山川選手

今季レギュラーシーズンで山川選手が打席に立つことはもうない。だがライオンズが残り試合で2位に浮上することができれば、ホークスとのクライマックスシリーズに出場することはできる。足首痛がどれほど深刻なものだったのかはわからないが、しかし山川選手にはここでシーズンを終えてしまうのではなく、クライマックスシリーズを見据えてしっかりと治療に専念してもらいたい。なぜなら山川選手は、ライオンズには必要不可欠なスラッガーだからだ。

少なくとも10日間は治療に専念するようなので、山川選手はこの期間を使ってもう一度対ホークスのデータを洗い直してみると良いのではないだろうか。ホークス戦に関しての得点圏打率は.385と非常に高いのだが、打率は.210に止まっている。ライオンズがもしクライマックスシリーズに進出することができれば、対ホークスのこの得点圏打率はチームにとって大きなアドバンテージとはるはずだ。

そして上位打線でチャンスメイクをすることができなかった時、4番の山川選手がそこで二塁打を打ってチャンスメイクすることができれば、後続のチャンスに強い栗山選手に繋げていくこともできる。山川選手は山賊打線の中心であるため、やはり森・山川両選手の3・4番コンビが機能していかなければ、ライオンズに勝機は見えてはこないだろう。

昨季は中村選手、今季は栗山選手。山川選手は37歳のこのふたりに4番を任せているようではいけない。だからこそこの10日間を有意義に使い、ホークスとのクライマックスシリーズで4番を打つ前提で調整をしてもらえたら、ファンとしては有終を期待することもできるというものだ。ライオンズはV2を達成しながら2年連続でクライマックスシリーズで敗退し、日本シリーズに駒を進めることができなかった。今季は逆に山川選手の復活により、2位から日本シリーズに進出しようではないか!

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埼玉西武ライオンズのリーグ3連覇のカギを握る男、山川穂高選手は間違いなくその一人として数えられる選手だ。2019年昨季は4番として開幕を迎えるも、シーズン途中でその座は剥奪されてしまった。そして元の持ち主である中村剛也選手の元に戻された。その中村剛也選手は軽度の脚の張りでやや調整が遅れているようだが、しかし2020年の開幕戦、誰が4番の座を射止めるのかはまだ予測できない。

チャンスに滅法弱かった2019年の山川穂高選手

今季の山川選手は広角打法にこだわりを見せている。ステップする際の足の上げ方もやや小さくし、よりタイミングを取りやすいフォームへとマイナーチェンジしたようだ。そしてこの打ち方を2020年は一貫して続けることを明言している。2019年の山川選手の打率は.256だった。ホームランが43本で2年連続キングだったとは言え、.256という数字は主軸としては低過ぎる。

そして打率以上に気になるのが.261という得点圏打率だ。この数字はチャンスに弱いということを表している。一方の中村選手の得点圏打率は.350で、昨季は満塁で圧倒的な強さを見せつけた。山川選手が不動の4番打者になるためには、この得点圏打率を改善する必要がある。昨季120という打点は素晴らしい数字ではあるが、もし得点圏打率が.300程度まで上がっていれば、140打点くらいにはなっていたのではないだろうか。

28歳の山川穂高選手と、36歳になる中村剛也選手

だがこの芳しくない得点圏打率は、山川選手が一流選手だと認められた証であるとも言える。つまり他球団が山川選手を打ち取るために徹底的に研究してきた結果がこの得点圏打率であり、2年連続で本塁打王になった後の2020年は、さらに相手チームのマークは厳しくなるはずだ。そこをどう跳ね返せるかが山川選手がただ長距離砲で終わってしまうのか、それとも真の4番打者へと進化するかの分かれ道となる。

エース対決で勝てる投手をエースと呼び、チャンスでエース級からヒットを打てる打者を4番打者と呼ぶ。長年ライオンズの4番を担ってきた中村剛也選手も36歳となる。そして山川選手は28歳と、野球選手としてはもっと旬な時期にいる。その若き大砲が、36歳の大ベテランに4番を譲るようではいけないし、それではチームも本当の意味で強くなることはできない。山川選手はやはり、中村選手に6~7番を打たせてあげられる数字を叩き出さなければならない。

首位打者、本塁打王、打点王によるクリーンナップ

今年のライオンズはここ数年の中では最も戦力が整っているように見える。先発陣もある程度揃い、ブルペン陣も充実している。層の厚さという意味ではまだ決して厚いとは言えないが、しかし怪我人が続出するような事態にさえならなければ、シーズンを通して安定的な戦いを見せてくれるのではないだろうか。そして山川穂高選手がその中心としてチームを牽引できれば、自ずと3連覇も見えてくるはずだ。

中村剛也選手のように、仮に打率が.286でも得点圏打率が.350であれば十分4番としての重責は担える。山川選手の場合は4番の再奪取を目指すのであれば、得点圏打率.300でも最低限の数字だとしか言えない。だがそんなことは山川選手自身が最もわかっていることであり、筆者が外野からとやかく言う必要もない。だが2020年、筆者は山川選手に関してはホームランの数よりも得点圏打率に注目しながら応援していきたいと思っている。

3番を打つ森友哉捕手の得点圏打率は.411とずば抜けていた。その後を打つであろう山川選手の得点圏打率が.300を超し、仮に5番を満塁男である中村選手が打つようになれば、まさに破壊力抜群の和製クリーンナップが完成する。辻発彦監督はクリーンナップを打線に2つ作るという考え方を持っているため、山川選手と中村選手が並ぶかどうかはまだ何とも言えないが、しかし3番首位打者、4番本塁打王、5番打点王という打線は相手投手から見えれば脅威でしかないはずだ。そんな夢のようなクリーンナップを形成できるのは12球団で唯一ライオンズだけであるからこそ、筆者は開幕戦でそれを見てみたいという希望を抱いている。